松戸市・柏市・流山市・野田市・我孫子市・鎌ケ谷市・印西市など東葛エリアで事業を営む、あるいはこれから施設の新設・移転を検討している事業者の皆さまに知っておいていただきたい動きがあります。千葉県が「東葛・湾岸広域都市圏都市計画区域の整備、開発及び保全の方針」の変更手続きを進めており、その中で鎌ケ谷市・流山市など複数の市の都市計画区域区分(いわゆる「線引き」)の見直しが対象に含まれています。
都市計画の話は一見、建設業や医療・福祉・教育分野の許認可実務とは縁遠く感じられるかもしれません。しかし、線引きの変更は「その土地に何を建てられるか」「事業所を増改築・移転できるか」を直接左右する、極めて実務的なテーマです。本稿では、今回の動きの背景と、事業者として押さえておくべきポイントを整理します。
1. 「東葛・湾岸広域都市圏都市計画区域」とは何か
千葉県では、複数市町村にまたがる広域的な都市圏ごとに「都市計画区域」を指定し、その整備・開発・保全の方針(いわゆる広域都市計画マスタープラン)を定めています。東葛エリアの多くの市は「東葛・湾岸広域都市圏都市計画区域」に含まれており、松戸市・柏市・流山市・野田市・鎌ケ谷市・市川市・船橋市など東葛・葛南地域の広い範囲がこの方針の対象です。
この方針は、区域全体の将来の土地利用や都市基盤整備の大枠を示すもので、各市が個別に定める都市計画(用途地域や都市計画道路など)の上位に位置づけられます。今回、千葉県はこの広域方針の変更案について、住民や事業者の意見を聞くための縦覧・公聴会の手続きを進めています。
出典:東葛・湾岸広域都市圏都市計画区域の整備、開発及び保全の方針並びに各都市計画区域区分の変更に係る案の概要の縦覧及び公聴会の開催のお知らせ|千葉県
2. 「線引き」とは何か ― 市街化区域と市街化調整区域の違い
今回の変更でとりわけ重要なのが「都市計画区域区分」、いわゆる「線引き」の見直しです。都市計画区域は大きく次の2つに区分されます。
市街化区域: すでに市街地を形成している区域、およびおおむね10年以内に優先的・計画的に市街化を図るべき区域です。住宅・店舗・事業所などの建築が原則として可能で、用途地域が定められます。
市街化調整区域: 市街化を抑制すべき区域とされ、原則として新たな建築物の建築や開発行為が制限されます。農地や山林などが多く、都市計画法上の開発許可を得なければ、事業所の新設や増改築が認められないケースが少なくありません。
この線引きがどこに引かれるかによって、同じ東葛エリア内でも「自由に事業所を建てられる土地」と「開発許可がなければ建築できない土地」に分かれます。線引きの見直しは、既存の市街化調整区域の一部が市街化区域に編入される(開発の可能性が広がる)場合もあれば、逆に区域区分の運用が厳格化される場合もあり、影響は地域や地権者の立場によって異なります。
3. 今回の見直しの対象と手続きの現状
千葉県が公表している資料によれば、今回の広域方針の変更に伴い、鎌ケ谷市の都市計画区域区分の変更についても案の縦覧・公聴会が実施されています。また流山市においても、同じ広域方針の変更に関する周知が市のホームページを通じて行われています。
都市計画の変更は、①素案の作成、②案の縦覧・意見書の受付、③公聴会の開催、④都市計画審議会への付議、⑤決定・告示という段階を経て進みます。現時点では縦覧・公聴会の段階にあり、今後、都市計画審議会での審議を経て正式決定・告示に至る見込みです。決定告示までにはなお時間を要するため、事業者としては「まだ確定していないが、方向性が示されつつある」段階として動向を注視する必要があります。
出典:
- 鎌ケ谷都市計画区域区分の変更に係る公聴会の開催結果について|千葉県
- 「東葛・湾岸広域都市圏 都市計画区域の整備、開発及び保全の方針」の変更について|流山市
- 都市計画区域区分の変更に係る案の縦覧|鎌ケ谷市
※本稿執筆時点で県・市の該当ページへの直接アクセスができなかったため、公表されているページタイトル・案内文の範囲で内容を整理しています。縦覧期間・公聴会の具体的な開催日、区域区分変更の詳細な線引き内容については、必ず千葉県および該当市の公式ページ・都市計画課窓口で最新情報をご確認ください。
4. 事業者・許認可実務への影響
線引きの変更は、以下のような場面で具体的な影響を及ぼします。
建設業を営む事業者にとって: 自社の営業所や資材置き場、あるいは施工現場となる土地が市街化区域・市街化調整区域のどちらに位置づけられるかで、建築確認や開発許可の要否、必要な手続きの複雑さが変わります。市街化調整区域での建築には都市計画法第34条に基づく開発許可が必要となる場合が多く、許可要件を満たすかどうかの事前確認が欠かせません。
医療機関・福祉施設にとって: クリニックや介護事業所、社会福祉施設の新設・増築を検討する際、立地予定地が市街化調整区域にある場合は、開発許可の取得可能性が事業計画の実現可否を左右します。線引きの見直しによって、これまで開発が難しかった土地に新たな可能性が生まれることもあれば、逆の可能性もあります。
幼稚園・認定こども園にとって: 園舎の新設・増築や、認定こども園への移行に伴う施設整備を検討している場合も同様に、立地する土地の区域区分は設置認可・確認申請の前提条件に関わります。特に東葛エリアでは子育て世帯の流入が続く地域もあり、施設整備のニーズと都市計画の動向は密接に関係します。
5. 事業者が今すべきこと
第一に、自社の事業所・計画地が今回の見直しの対象エリアに含まれるかどうかを確認することです。対象となる市(鎌ケ谷市・流山市など)に事業所や計画地をお持ちの方は、該当市の都市計画課に問い合わせるか、公表されている縦覧資料を確認することをお勧めします。
第二に、今後の事業計画(施設の新設・増改築・移転)に土地取得や開発許可が絡む場合は、線引きの見直し状況を踏まえたスケジュール調整を検討することです。決定・告示のタイミング次第で、開発許可の可否や必要な手続きが変わる可能性があります。
第三に、建設業許可・経営事項審査、医療法人・社会福祉法人の施設整備、幼稚園・認定こども園の設置認可など、許認可手続きと都市計画法上の手続きは相互に関連するため、両方の観点から事前に整理しておくことが望まれます。
おわりに
都市計画の広域方針の変更は地味な行政手続きに見えますが、事業用地の将来の可能性を左右する重要な情報です。東葛エリアで施設の新設・移転・拡張をお考えの事業者の皆さまは、今後の公告・決定情報にもぜひご注目ください。個別の土地の取扱いや、許認可手続きへの影響について具体的にご相談されたい場合は、行政書士までお気軽にお問い合わせください。


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