のしいか所長令和8年9月17日、経営事項審査そのものを見直す会議の第1回が開かれました。7月に改正されたばかりの、その制度の根っこの議論です。



また点数の付け方が変わるのかい。7月に対応したばかりなんだが



すぐに変わる話ではありません。第1回が終わったところで、まだ論点を並べている段階です。ただ配られた資料を読んで、ひとつ驚いたことがあります。
この記事は、第1回の配布資料を実際に読んで書いています。何が議論されるのか、いつ決まるのか、中小の建設会社に何が関わるのか。「まだ決まっていない」ということ自体を、はっきりお伝えするのが目的です。
9月17日、第1回が開かれました
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会議の名前 | 持続的な成長産業としての建設業のあり方に関する検討会 第1回 企業評価ワーキンググループ |
| 開催 | 令和8年9月17日(木)10:00〜12:00 |
| 場所 | 中央合同庁舎2号館 国土交通省第2会議室A・B |
| 親会 | 令和8年7月9日に第1回が開かれた検討会 |
| 事務局 | 国土交通省 不動産・建設経済局 建設業課 |
親会にあたる「持続的な成長産業としての建設業のあり方に関する検討会」は、令和8年7月9日に始まりました。設置の趣旨はこうです。
「建設産業政策2017+10」とりまとめからまもなく10年を迎える中、持続可能な成長産業としての建設業政策のあり方に関する新たなビジョンを議論します
10年に一度の、大きな見直しです。その下に置かれたワーキンググループのひとつが、企業評価——つまり経営事項審査を扱います。
何を議論する会議なのか
報道発表には、こう書かれています。
現行の建設企業の評価制度を検証の上、新たな評価の観点や評価結果の活用促進の方向性について検討
第1回の議題は4つでした。①ワーキンググループの設置趣旨、②現行の企業評価制度、③企業評価に係るこれまでの議論等、④ワーキンググループにおける主な論点。
「現行の企業評価制度」と「これまでの議論」を確認する回です。つまりまだ何も決まっていません。新しい点数の付け方が示されたわけでも、改正の時期が出たわけでもありません。出発点に立ったところです。
配布資料を読んで、驚いたことがあります
第1回の配布資料は、議事次第と配席図を含めて10点です。そのうち中身のある資料を順に開いていったところ、資料4の表紙に、こうありました。
平成28年12月22日 第2回建設産業政策会議提出資料
10年前の資料です。参考4も同じく平成28年12月22日の作成。資料3に載っている数字も平成28年11月時点のものでした。
これは、手抜きではありません。「企業評価に係るこれまでの議論等」が第1回の議題に挙がっています。10年前に何をどこまで議論したかを、そのまま机に戻して確認する——会議の作りとしては、まっとうな始め方です。
ただ、読者の立場で見ると、別のことが見えてきます。10年前に挙がっていた論点が、いまもそのまま論点であるということです。
10年前に、何が挙がっていたか
平成28年の資料に並んでいた検討事項は、次のとおりです。
- 様々な場面・段階における建設会社の企業評価
- 建設会社の有益な企業評価情報の提供・活用
- 生産性の向上に取り組む企業の適正な評価
- 働き方の改革に取り組む企業の適正な評価
- 地域における建設企業の役割維持に向けた評価
- 申請書類等の簡素化
- 多様な経営判断への対応
経営事項審査そのものについても、「経審の性格、あるべき姿(ランク分けや総合評価制度との役割分担)」「経審の関係書類の簡素化」「経管要件のあり方」が挙げられていました。
そして、申請の負担について、こんな記述があります。
| 平成28年の資料にあった記述 |
|---|
| 大手ゼネコンの申請書類は段ボール2〜3箱相当 |
| 審査する側は1週間で1人の担当者が20箱以上を処理 |
| 企業側の準備の負担は2〜6か月程度 |
「申請書類等の簡素化」は、10年前からの宿題です。電子申請は進みましたが、そろえる書類の量そのものは、10年前の議論の水準から大きく動いていません。
この10年で、数字はどう動いたか
10年前の資料にある数字と、いまの数字を並べてみます。
| 平成28年の資料 | いま(令和8年3月末) | |
|---|---|---|
| 建設業許可業者数 | 約47万業者 | 483,823業者 |
| 経審を受けている業者 | 約14万業者(約30%) | — |
| うち公共工事元請で義務 | 約6万業者 | — |
| うち任意で受審 | 約8万業者 | — |
許可業者の数は、ほとんど動いていません。約47万が48.4万。10年で3%ほどの増です。3年連続で増えてはいますが、直近の増加率は0.03%——ほぼ横ばいに戻っています。ピークだった平成12年3月末の600,980業者と比べると、19.5%少ない水準です。
ここで目を引くのは「任意で受審している約8万業者」です。経審は公共工事の元請になるときに法律で義務づけられますが、義務でないのに受けている会社が、義務の会社より多い。金融機関や元請への説明に使われているということです。
今回のワーキンググループが「評価結果の活用促進」を掲げているのは、ここに関わります。経審の点数が公共工事のランク分けだけでなく、民間の取引でも読まれる指標になれば、任意で受ける意味がもっとはっきりします。
いま出ている意見
配布資料のうち参考1「これまでに各所からいただいたことのある意見の例」には、項目ごとに意見が並んでいます。中小の建設会社に関わるものを拾います。
- 「中小企業も付いていける体制が必要」
- 「下請企業、専門工事業者にも光をあてる」
- 「ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点が重要」
- 「週休2日を確保している企業」を評価する
- 「申請書類を簡素化すべき」
「下請企業、専門工事業者にも光をあてる」は、見逃せない一言です。いまの経審は、元請完成工事高(Z点)を評価の柱のひとつにしています。下請専門の会社は、ここで点が伸びません。資料3にも「現行の企業評価が主に元請を対象としていることを踏まえ、元請にならない専門工事企業の適正な評価」という視点が挙げられています。
東葛でお付き合いのある会社にも、下請を中心にやってこられた専門工事業の方が多くいらっしゃいます。ここが動けば、経審を受ける意味そのものが変わります。
令和8年7月の改正との関係
「7月に改正したばかりなのに」と思われるのは、もっともです。
ただ、2つは層が違います。7月の改正は、いまの枠組みの中での手直し——W点の見直し、社会保険未加入の減点の廃止など。今回のワーキンググループは、その枠組みそのものを検証します。
| 令和8年7月の改正 | 企業評価ワーキンググループ | |
|---|---|---|
| 層 | いまの枠組みの中の手直し | 枠組みそのものの検証 |
| 状態 | 施行済み(7月申請分から) | 第1回が終わったところ |
| いま備えること | 申請の実務(済んでいるはず) | ありません |
いま備えることは、ありません。議論が始まっただけです。7月の改正への対応が済んでいれば、当面はそれで足ります。
中小の建設会社に、どう関わるか
すぐに動くことはありませんが、向きだけは知っておく値打ちがあります。
① 評価される中身が、広がる方向です
生産性の向上、働き方の改革、地域での役割。いずれも「完成工事高が大きい会社が強い」という評価からは外れた軸です。10年前の資料にも、いまの意見にも、同じ方向が出ています。
週休2日や、ICTの導入や、地域の災害協定。これまで「点にならないけれど、やるべきこと」として取り組んでこられたことが、点になる日が来るかもしれません。記録を残しておくことに、損はありません。
② 専門工事業の評価が、論点に入っています
先ほどの「元請にならない専門工事企業の適正な評価」です。下請中心の会社にとって、経審は「受けても点が伸びない制度」でした。ここが見直されれば、受審の判断そのものが変わります。
③ 申請の簡素化は、10年越しの宿題です
期待したいところですが、10年前から論点に挙がり続けているという事実も、あわせて見ておく必要があります。「簡素化されるから、いまは準備しなくてよい」とは考えないでください。
いつ決まるのか——まだ分かりません
| 何が | 令和8年10月2日時点 |
|---|---|
| 第1回の開催 | 令和8年9月17日に終わりました |
| 配布資料 | 公開されています |
| 第2回以降の日程 | 公表されていません |
| とりまとめの時期 | 示されていません |
| 改正の内容 | まったく未定です |
| 施行の時期 | まったく未定です |
親会のとりまとめの時期も、公表されていません。ただ、「建設産業政策2017+10」が平成28年10月の第1回から翌年6月のとりまとめまで8か月でした。同じ運びなら、親会は令和8年7月に始まっていますので、令和9年の前半に何らかの形が見えるかもしれません。これはあくまで前回からの推測で、裏付けのある話ではありません。
当事務所では、この会議を定点観測します。資料が出るたびに読み、動きがあればこの記事に書き足していきます。
当事務所がお手伝いできること
経営事項審査の申請と、その前の決算変更届です。千葉県松戸市で、建設業許可と経審を中心にお預かりしています。
- 経営事項審査の申請 令和8年7月改正への対応を含めて
- 決算変更届 経審の前提になります
- いまの点数の棚卸し どこで点を落としているかの確認
- 再審査の期限の管理 年に一度きりの期限です
制度が動く前に、いまの自社の点数の内訳を把握しておくこと。これがいちばん確かな備えです。評価軸が増えるにしても減るにしても、出発点は「いまどこで点を取り、どこで落としているか」——そこが分かっていれば、改正が出たときに動けます。
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出典
最終更新日:2026年10月2日 / 本記事は令和8年10月2日時点で国土交通省が公表している資料にもとづいています。企業評価ワーキンググループは第1回が終わった段階であり、改正の内容も時期も決まっていません。本文で引用した資料のうち、資料2・資料4・参考4は平成28年12月22日の第2回建設産業政策会議の提出資料です。そこに記載された経営事項審査の内容は当時のものであり、現行制度とは異なります。現在の経審の取扱いは、千葉県の申請の手引と所管の窓口でご確認ください。
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