のしいか所長令和9年度の概算要求が出そろいました。幼児教育と保育は文部科学省とこども家庭庁の2つに分かれて出てきますので、両方を並べてご説明します。



役所が2つあると、どちらを見ればいいのか分かりにくいですね。うちは幼稚園だから文科省だけ見ていればいいのしょうか?



それが、そうでもないのです。新制度に移行された園なら、運営費はこども家庭庁の側から来ます。看板は文科省、財布はこども家庭庁——ここを分けて見ると、資料がすっと読めるようになります。
まず、概算要求という言葉について
国の予算は、各省庁が「これだけ欲しい」と申請するところから始まります。この申請が概算要求で、毎年8月末が締切です。ここから財務省との折衝に入り、12月に政府案が閣議決定され、翌年3月に国会で成立——という流れになります。
役所が2つに分かれている理由
| 文部科学省 | こども家庭庁 | |
|---|---|---|
| 受け持ち | 幼児教育の中身 | 保育の実務とお金 |
| 主なもの | 小学校との接続、調査研究、施設整備 | 運営費、人材確保、処遇改善、施設整備 |
| 今回の要求 | 68億円(幼児教育の質の向上) | 2兆7,221億円(保育関係予算) |
| 公表 | 令和8年8月28日 | 令和8年8月27日 |
金額の桁がまるで違います。これは役割が違うからです。こども家庭庁の2兆7,221億円には、全国の保育所・認定こども園・施設型給付幼稚園の運営費がそっくり入っています。文科省の68億円は、教育の中身を良くするための事業費です。大小を比べる数字ではありません。
文部科学省 ―― 68億円、前年度の3倍以上です
「幼児教育の質の向上及び小学校教育との円滑な接続」という項目に、68億円が要求されました。前年度予算は20億円です。3.4倍になります。
| 内訳 | 令和9年度要求 | 前年度 |
|---|---|---|
| 自治体への支援(幼保小の架け橋プログラム) | 9.6億円 | 4.9億円 |
| 質の向上に関する調査研究等 | 3.1億円 | 2.4億円 |
| 質を支える教育環境の整備 | 55億円 | 12億円 |
| うち 教育支援体制整備事業費交付金 | 31億円 | — |
| うち 私立幼稚園施設整備費補助金 | 25億円 | — |
増えたのは、ほぼ「教育環境の整備」の43億円です。12億円から55億円へ、4.6倍。その中に、私立幼稚園施設整備費補助金の25億円が入っています。園舎や設備に手を入れたい園にとっては、いちばん直接に関わる数字です。
「幼保小の架け橋プログラム」とは
5歳児から小学校1年生までの2年間を一つのまとまりとしてとらえ、園と小学校が一緒にカリキュラムを考える取組です。市町村が旗を振り、地域の園と小学校が協議会をつくって進めます。
こども家庭庁 ―― 2兆7,221億円
保育関係予算の総額です。前年度は2兆5,747億円でしたので、1,474億円の増、5.7%の伸びになります。
園に関わりの深いところを拾います。
| 施策 | 要求額 | 前年度 |
|---|---|---|
| 保育対策総合支援事業費補助金(人材確保) | 700億円 | 463億円 |
| 就学前教育・保育施設整備交付金 | 820億円 +事項要求229億円 | — |
人材確保の700億円が、いちばん大きく動きました。463億円から237億円の増——1.5倍です。保育士が集まらないという現場の声に、国が金額で応えた形になっています。
人材確保の中身を、園の目線で見ます
700億円の中には、園が直接使えるメニューが並んでいます。金額は補助基準額ですので、実際にいくら入るかは自治体の運用によります。
| メニュー | 補助基準額 |
|---|---|
| 保育士宿舎借り上げ支援 採用5年以内の常勤保育士が対象 | 月額75,000円を上限 |
| 保育士資格等取得支援 受講料と、代替職員の人件費 | 受講料の2分の1(上限30万円) 代替職員 1日8,970円 |
| 保育補助者雇上強化 | 経験年数別に300万〜760万円 |
| 保育士修学資金貸付 | 学費 月5万円/入学準備金 20万円 就職準備金 20万円 |
| 保育養成施設就職促進支援【拡充】 | 1施設あたり年額110.4万円 |
【新規】が3つあります
- 保育所等におけるICT化推進事業【新規】 システム導入に1機能20万円、4機能で80万円。こども誰でも通園制度への対応は1施設20万円。認可外保育施設の機器も1施設20万円。国の補助割合は2分の1(協議会を設ける場合は3分の2)
- 保育ICT人材育成・業務改善支援事業【新規】 往還型の研修と、専門家による巡回支援。都道府県級の自治体で813万円、その他で406.5万円
- 性被害防止対策【新規】 設備の支援、保育士データベースの改修、他システムとの連携。保育環境改善等事業のメニューにも追加されます
ICTが2つ並んでいるのが、今回の特徴です。令和8年度には公定価格に「保育ICT推進加算」も新設されました。機器を入れる補助と、使いこなす人を育てる支援が、両輪で用意されようとしています。「導入したが誰も使っていない」という失敗が、国の側にも見えているのだと思います。
処遇改善は、まだ金額が書かれていません
民間給与動向等を踏まえた保育士等の更なる処遇改善を検討する——資料にはこう書かれているだけで、具体的な要求額は示されていません。
これは書き落としではなく、概算要求の段階では金額を置かず、年末の予算編成の過程で決めるという扱いです。人事院勧告や民間給与の動きを見てから固める性質のものだからです。
「事項要求」という、金額のない箱があります
概算要求には、金額を入れずに項目だけを立てておくやり方があります。これを事項要求といいます。年末の予算編成の過程で中身を詰める、という意味です。今回、次の4つが事項要求に置かれました。
- 消費税率引上げに伴う社会保障の充実
- 幼児教育・保育の無償化
- 児童福祉施設の耐災害性強化対策
- 0歳から2歳を含む幼児教育・保育の支援
後ろの2つに、目を留めておいてください。「0歳から2歳を含む」——いまの無償化は3歳から5歳が中心で、0歳から2歳は住民税非課税世帯だけです。その線をどうするかが、年末の焦点のひとつになります。0歳から2歳の扱いが動けば、小規模保育も認定こども園の3号認定も、まとめて影響を受けます。
施設整備の細かい変更が、3つ
就学前教育・保育施設整備交付金(820億円+事項要求229億円)に、次の【拡充】が入りました。地味ですが、該当する園には効きます。
- 熱中症対策の整備を、特殊付帯工事に追加【拡充】
- 公私連携保育法人の設置主体の要件を拡大【拡充】
- 私立認定こども園の設置主体に日本赤十字社等を追加【拡充】
こども誰でも通園制度は、次の段階に入りました
令和8年4月から全国で本格実施されている制度です。今回の要求では、制度を広げる話ではなく、回すための話が並んでいます。
- システムへの監査機能の追加と、指導監査業務の標準化
- ICT化推進事業で、この制度への対応に1施設20万円
「監査」という言葉が出てきたことに、意味があります。始まって半年、国は制度を広げる段階から、正しく運用されているかを見る段階へ移ろうとしています。実施している園は、記録の取り方をいまのうちに整えておくのが賢明です。
園が、いまできること
- 宿舎借り上げと資格取得支援を、市に確認する どちらも既存の制度で、いま動いています。実施しているか、上限はいくらか。来年度を待つ必要はありません
- 園舎・設備の計画があれば、来年度に寄せることを考える 私立幼稚園施設整備費補助金が25億円、施設整備交付金の熱中症対策が【拡充】。要求どおりに通れば、来年度は取りやすい年になります
- こども誰でも通園制度の記録を点検する 監査機能が入ります。利用時間、児童ごとの記録、契約書類。いま整えておけば、あとで慌てません
- 12月の政府案を待つ 処遇改善も無償化の範囲も、決まるのはそこからです。職員や保護者に説明するのは、それからで構いません



概算要求は、国が来年どこにお金を置くつもりかを、8月のうちに教えてくれる資料です。決定ではありませんから、そのまま真に受ける必要はありません。



宿舎借り上げと資格取得支援はいま動いている話なので、そこは市に聞いてみます。



そこが、この資料のいちばん実のあるところです。来年度の話にまぎれて、いま使える制度が並んでいます。



認定こども園への移行、施設整備の補助申請、こども誰でも通園制度の実務についてご相談を承っております。松戸市・柏市をはじめ、千葉県内の園からお声がけをいただいております。どうぞお気軽にどうぞ。
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制度の全体像から先にご覧になりたい方は、1本目からどうぞ。






参考
最終更新日:2026年9月14日 / 本記事の金額はいずれも令和9年度の概算要求額であり、確定した予算額ではありません。政府案は12月に閣議決定されます。補助基準額や実施の有無は自治体によって異なりますので、申請にあたっては必ず所在市町村と、文部科学省・こども家庭庁の最新資料をご確認ください。
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