のしいか所長介護シリーズの2本目です。来年4月に、介護報酬が変わります。いま国で議論の最中でして、中身が固まるのは12月、正式に決まるのは1月——そういう段取りになっています。



去年の夏に上がったばかりでしたよね。



それは臨時の改定でした。令和8年8月の+2.03%は、賃上げのために本番を待たずに行われたものです。3年に1度の本番は、来年4月のほうです。この2つは別物として見てください。
この記事はいま議論されている中身と、いつ何が決まるのかをまとめたものです。まだ何も決まっていません。決まっていないことを決まったように書くわけにはまいりませんので、「国がいまどこを見ているか」と「決まる前に手を打てること」の2つに絞ってお伝えします。
まず、去年の改定と混ぜないでください
ここ2年で改定が2回あるように見えますが、性格がまるで違います。
| 令和8年度改定 済んでいます | 令和9年度改定 これからです | |
|---|---|---|
| 位置づけ | 期中改定 本番を待たずに行った臨時の改定 | 3年に1度の本番 前回は令和6年度 |
| 改定率 | +2.03% 処遇改善分+1.95% 食費の基準費用額+0.09% | まだ出ていません 年末の予算編成で決まります |
| 施行 | 令和8年8月 | 令和9年4月の見込み |
| 中身 | 賃上げがほぼすべて | 基準と報酬の全面的な見直し |
令和8年度の+2.03%は、「強い経済を実現する総合経済対策」にもとづく臨時の措置でした。介護職員だけだった処遇改善加算が介護従事者全体に広がり、訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援にも新しく加算が設けられたのが、このときです。ケアマネ事業所に処遇改善加算が入ったのは、去年の8月からということになります。
来年4月は、これとは規模が違います。賃上げだけでなく、人員配置基準、運営基準、サービスの区分そのものまで見直しの対象に入っています。「うちのサービスの形が変わるかもしれない」という前提で見ていただく年です。
いつ、何が決まるのか
厚生労働省が令和8年8月5日の分科会に出した「令和9年度介護報酬改定に向けた今後の検討の進め方について(案)」に、段取りが書かれています。
| 時期 | 何が行われるか |
|---|---|
| 令和8年4月〜夏頃 終わりました | 主な論点について議論/事業者団体等からのヒアリング |
| 令和8年10〜12月頃 いま、ここの直前です | 具体的な方向性について議論 |
| 令和8年12月中 | 報酬・基準に関する基本的な考え方の整理・とりまとめ ※基準に関しては先行してとりまとめ |
| 年末 | 令和9年度政府予算編成 ここで改定率が決まります |
| 令和9年1月頃 | 介護報酬改定案の諮問・答申 ここで単位数が世に出ます |
| 令和9年4月 | 施行の見込み |
読みどころは「基準に関しては先行してとりまとめ」の一行です。人員配置や運営のルールは、単位数より早く形が見えます。人を採る・シフトを組む・規程を直すといった準備は、12月の段階で動き出せるということになります。
この夏、何が議論されたか
議論の場は社会保障審議会の介護給付費分科会です。令和8年の夏に開かれた回を並べます。「この回で、この主題が取り上げられた」という事実だけを書いています。
| 回 | 開催日 | 主題 |
|---|---|---|
| 第260回 | 7月9日 | 介護老人福祉施設等 |
| 第261回 | 7月23日 | 人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築 |
| 第262回 | 8月5日 | 定期巡回・随時対応型訪問介護看護および夜間対応型訪問介護/高齢者住まいに対するサービス提供の在り方/地域区分 |
| 第263回 | 8月28日 | 介護人材確保に向けた処遇改善等/生産性向上/高齢者虐待の防止/災害時の業務継続/ハラスメント対策 |
| 第264回 | 9月3日 | 認知症への対応力強化/医療・介護連携/科学的介護情報システム(LIFE)/口腔・栄養/多床室の室料負担 |
| 第265〜267回 | 9月10日 9月14日 9月16日 | 関係団体等意見交換会①②③ |
9月の3回は、現場の団体から話を聞く回でした。全国ホームヘルパー協議会、全国定期巡回・随時対応型訪問介護看護協議会、全国小規模多機能型居宅介護事業者連絡会、高齢者住まい事業者団体連合会、日本福祉用具供給協会——在宅系と居住系の団体が、そろって並んでいます。ここで出た声が、10月からの「具体的な方向性」の議論に入ります。
在宅系に関わるところ ―― 夜間対応型の話が大きいです
8月5日の資料に、サービスの区分そのものに関わる記述があります。社会保障審議会・介護保険部会の意見(令和7年12月25日)として、こう引かれています。
夜間対応型訪問介護を廃止し、定期巡回・随時対応型訪問介護看護と統合することが適当である
あわせて、「一定の経過措置期間を設けた上で、人員配置基準や報酬に関して特例的な類型を設けることが適当」とも書かれています。いきなり消える、という話ではありません。
| 定期巡回・随時対応型 | 夜間対応型訪問介護 | |
|---|---|---|
| 事業所数(平成25年→令和7年) | 176 → 1,397 | 163 → 184 |
| 利用者数(令和7年4月審査分) | 11.6万人(前年比24%増) | 0.8万人(減少傾向) |
| 費用額(令和6年度) | 994億9,400万円 | 39億2,000万円 |
| 1事業所1か月あたり | 620万円 | 180万円 |
| 収支差率(令和6年度決算) | 13.4% | 12.8% |
数字を見れば、統合の話が出てくる理由は分かります。13年で事業所数が8倍になった定期巡回に対し、夜間対応型は184事業所、全国で0.8万人。全サービス平均の収支差率が4.7%のところ、どちらも13%前後という点も、議論では触れられることになります。
居住系に関わるところ ―― 「囲い込み」が正面から出ました
同じ8月5日に、「高齢者住まいに対するサービス提供の在り方」という資料が出ています。有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅の話です。
| (令和6年6月30日時点) | 棟数・戸数 | 定員 |
|---|---|---|
| 有料老人ホーム | 25,198棟 うち介護付 約5,179/住宅型 約12,668 | 951,236名 |
| サービス付き高齢者向け住宅 | 8,301棟 | 287,687戸 |
この10年で、入居者の姿が変わりました。2014年から2024年の比較で、90歳以上がいちばん多い層になり、住宅型有料老人ホームで要介護3以上が48.87%から55.9%へ。退去の理由も、死亡による退去が36.6%から55.3%に増えています。居室での看取りが57.7%。住まいというより、終の住処に近づいています。
そして、併設の数字です。
- 住宅型有料老人ホーム 79.1%に併設・隣接の事業所がある
- サービス付き高齢者向け住宅 83.4%に併設・隣接の事業所がある
人が採れない、という前提の数字
8月28日の資料から、議論の土台になっている数字を拾います。
| 何の数字か | 介護 | 全体 |
|---|---|---|
| 有効求人倍率(令和8年6月) | 3.76倍 | 1.01倍 |
| 離職率(令和7年度) | 14.3% | 15.2% |
| 給与(令和7年・賞与込み) | 31.4万円 | 39.6万円 |
| 訪問介護員の不足感 | 82.9% | — |
離職率は全産業より低いのに、有効求人倍率は3.7倍です。辞める人が多いのではなく、入ってくる人が足りていない——数字はそう読めます。給与の差は月8万円あまり。訪問介護員については、82.9%の事業所が足りないと答えています。
必要数も示されています。2022年度の約215万人に対し、2026年度に約240万人、2040年度に約272万人。いまから57万人増やさなければならない、という計算です。
処遇改善加算は、ほぼ全員が取っています
| 介護職員等処遇改善加算 | 令和6年度 | 令和7年度 |
|---|---|---|
| 取得率(全体) | 95.5% | 96.8% |
| 加算Ⅰ | 45.7% | 54.9% |
| 加算Ⅱ | 32.2% | 28.7% |
| 加算Ⅲ | 11.8% | 9.2% |
| 加算Ⅳ | 2.6% | 4.0% |
取得率96.8%、そのうち半数以上がいちばん上の加算Ⅰです。逆にいえば、加算を取っていない3%ほどの事業所は、報酬の差がそのまま賃金の差になっています。未取得の理由は「算定要件を達成できない」27.0%、「事務作業が煩雑」25.7%でした。
生産性向上は、データ連携が一気に進みました
| ケアプランデータ連携システムの導入率 | |
|---|---|
| 令和7年5月末 | 5.3% |
| 令和7年11月末 | 9.3% |
| 令和8年7月末 | 53.1% |
8か月で9.3%から53.1%です。ここまで急に動いた数字は、そうそうありません。国が本気で押している分野だ、という読み方ができます。来年度の改定で、さらに後押しが乗る見込みは高いとみておいてよいでしょう。
一方、生産性向上推進体制加算の算定率(令和8年5月請求実績)は加算Ⅰが4.7%、加算Ⅱが36.2%。加算Ⅰのほうは、まだ届いていない事業所が大半です。
決まる前に、いま手を打てること
単位数を待つ必要のない準備が、いくつかあります。12月・1月に慌てないための、5つです。
- 処遇改善加算の区分を確認する いまⅡ・Ⅲ・Ⅳの事業所は、Ⅰに届かない理由を洗い出しておいてください。要件は改定のたびに動きますが、キャリアパスや研修の記録は、いま整えておいても無駄になりません
- 就業規則の所定労働時間を見ておく 常勤換算の分母です。人員配置基準が動いたときに、真っ先に響きます
- ケアプランデータ連携システムを入れる 半数を超えました。入れていないほうが少数派になりつつあります
- 夜間対応型をお持ちなら、定期巡回の要件を調べておく 統合の議論が出ています。経過措置と特例的な類型が置かれる見込みですが、早めに中身を知っておくに越したことはありません
- 12月に「基準」の取りまとめが出ることを、予定に入れる 単位数より早く出ます。人とシフトの話は、ここから動かせます
この記事は、決まったら書き替えます
ここまで書いてきたとおり、本記事の内容は「議論の途中経過」です。12月の取りまとめと1月の答申で、書き直すべきところが出てきます。
| 時期 | この記事のどこが変わるか |
|---|---|
| 令和8年12月 | 基準の取りまとめが出ます。人員配置・運営基準の節を書き足します |
| 年末 | 改定率が決まります。「まだ出ていません」の欄が埋まります |
| 令和9年1月 | 諮問・答申。単位数が出ます。別記事を立てます |



まだ決まっていない話を、いま読む値打ちはあるの?



あります。1月に単位数が出てから4月の施行まで、2か月しかありません。そのときに「何が論点だったか」を知っている事業所と、知らない事業所とでは、動き出しの速さが違います。



それに、処遇改善加算の区分も、データ連携も、就業規則の所定労働時間も、いま手を付けられます。改定を待つ話ではありません。



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介護シリーズの1本目と、人と賃金の話です。






参考
最終更新日:2026年9月16日 / 本記事に書かれている令和9年度介護報酬改定の内容は、すべて議論の途中経過です。改定率・単位数・算定要件・人員配置基準のいずれも、本記事の作成時点では決まっておりません。基本的な考え方の取りまとめは令和8年12月中、改定案の諮問・答申は令和9年1月頃の予定です。実務のご判断にあたっては、必ず厚生労働省の最新の資料と、所在市町村・千葉県のお知らせをご確認ください。
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