のしいか所長9月4日、国土交通省と厚生労働省が「建設業の人材確保・育成」の令和9年度概算要求をまとめて公表しました。両省が足並みをそろえて出す、毎年恒例の資料です。



概算要求というのは、結局まだ決まっていない話なんだろう? うちに関係あるのかね



おっしゃるとおり、これは「要求」であって決定ではありません。ただ、国がどこに力を入れようとしているかが、金額つきで分かります。そして——いま使える助成金の話も、この中に混ざっています。そこを切り分けてご説明します。
そもそも「概算要求」とは何か
国の予算は、各省庁が「これだけ欲しい」と申請するところから始まります。この申請が概算要求で、毎年8月末が締切です。ここから財務省との折衝が始まり、12月に政府案が閣議決定され、翌年3月に国会で成立——という流れになります。
つまり、いまの位置づけはこうです。
- 8月末 各省庁が概算要求を出す ← いまここ
- 12月 政府案が閣議決定される 金額はここで削られることが多いです
- 翌年3月 国会で成立し、4月から使える
なぜ、いま人材確保なのか
発表資料は、建設業の年齢構成をこう書いています。
60歳以上が約4分の1を占める一方、29歳以下は全体の約12%。将来の建設業を支える担い手の確保が急務である。
4人に1人が60歳以上で、29歳以下は8人に1人。この数字が、以下の施策すべての出発点になっています。国の言い分は一貫していて、「若者と女性の入職」「処遇改善」「働き方改革」「生産性向上」を一体で進める、というものです。
柱は3つです
| 柱 | ねらい |
|---|---|
| ① 人材確保 | 建設業への入職・定着を促す |
| ② 人材育成 | 若年技能者などを育てる環境を整える |
| ③ 魅力ある職場づくり | 処遇を改善し、安心して働ける環境を整える |
① 人材確保
国土交通省
- 建設業への入職促進に向けた戦略的な魅力発信【拡充】 就業を考える層とその保護者に向けた発信のノウハウを業界内へ展開。女性をはじめ多様な人材が活躍・定着できる環境整備を促す
- 建設産業の供給力強化事業【新規】 処遇改善と生産性向上を両輪で進め、その姿を戦略的に発信する
厚生労働省
| 施策 | 要求額 | 区分 |
|---|---|---|
| 建設事業主等に対する助成金による支援 | 73億円 | 拡充 |
| ハローワークにおける人材不足分野のマッチング支援 | 68億円 | 拡充 |
| 「つなぐ化」事業 | 33百万円 | 継続 |
| 高校生に対する地元における職業の理解の促進支援 | 20百万円 | 継続 |
ハローワークの欄に、見逃せない記述があります。「人材確保対策コーナー」で、CCUSに登録済みの建設事業主の求人情報を提供する——と書かれています。つまり、CCUSに登録しているかどうかで、ハローワークでの見え方が変わるということです。
② 人材育成
| 施策 | 要求額 | 区分 |
|---|---|---|
| 教育訓練給付金等による個人の学び直しの支援 | 582億円 | 継続 |
| ものづくりマイスター制度による若年技能者への実技指導 | 28億円 | 継続 |
| 中小建設事業主等への支援(建設労働者育成支援事業) | 4.9億円 | 継続 |
| 建設分野におけるハロートレーニング(職業訓練) | 1.1億円 | 継続 |
建設労働者育成支援事業は、訓練カリキュラムの策定から訓練生の募集、職業訓練、就職支援までをパッケージで実施するものです。自社だけで育成の仕組みを組むのが難しい中小事業者向けの受け皿とお考えください。
③ 魅力ある職場づくり
国土交通省 ―― 制度のほうを動かします
- 建設技能者の処遇改善の推進【拡充】 発注者から建設事業者、技能者まで、適正な労務費・賃金が行き渡る新しい商習慣を定着させる。「労務費に関する基準」の実効性を確保する
- 技術者制度の合理化による技術水準と供給力の確保【拡充】 技術者の処遇改善・担い手確保・生産性向上に向けた制度の見直しを検討する
- 適正な工期設定等による働き方改革の推進【継続】 工期設定の実態調査と、工期適正化の周知・啓発
- 地方の入札契約改善推進事業【継続】 地方公共団体の発注体制の強化と入札契約の適正化を支援
1つめが、この柱でいちばん重い項目です。「労務費に関する基準」の実効性を確保する——令和8年から動き始めた基準に、来年度は予算をつけて本気で定着させにいくと読めます。見積書の作り方に関わる話ですので、当事務所でも別途くわしく扱っています。
厚生労働省 ―― 助成金と安全衛生
| 施策 | 要求額 | 区分 |
|---|---|---|
| 働き方改革推進支援助成金(建設業等向け専用コース) | 101億円 | 拡充 |
| 働き方改革推進支援センターによる支援 | 41億円 | 拡充 |
| 個人事業者等の安全衛生確保支援事業 | 1.7億円 | 継続 |
| 雇用管理責任者等に対する研修 | 1.1億円 | 拡充 |
| 中小専門工事業者の安全衛生活動支援事業 | 96百万円 | 継続 |
| 墜落・転落災害等防止対策推進事業 | 78百万円 | 継続 |
| 労災保険特別加入制度の周知広報等事業 | 29百万円 | 継続 |
いま使える助成金の話をします
ここまでは来年度の話でした。ですが、73億円と書かれている「建設事業主等に対する助成金」は、いまも動いています。その中で、千葉県の中小建設会社がいちばん使いやすいのは、これだと考えます。
人材確保等支援助成金(建設キャリアアップシステム等活用促進コース)
対象 中小建設事業主
助成額 建設技能者1人あたり16万円
上限 一事業年度あたり160万円(16万円 × 10名)
要件は2つです。
- 能力評価制度のレベル判定でレベルが上がった技能者の賃金を、5%以上増やすこと
- 雇用するすべての建設技能者について、CCUSの技能者登録(詳細型登録)を行うこと
2つめが関門です。「すべての」技能者を、しかも「詳細型」で登録する必要があります。簡易型では足りません。逆にいえば、そこさえ越えれば、レベルが上がった人の賃金を5%上げるだけで1人16万円です。10人で160万円。賃上げの原資の一部を、国が持つ形になります。
資料全体を通して、一本の線が通っています
CCUSです。助成金の要件になり、ハローワークの求人の扱いを変え、賃金助成額を1.1倍にする根拠になり、職業訓練の場でも周知される。今回の資料のあちこちに、CCUSが顔を出します。
経営事項審査でも加点項目になっていますから、公共工事・助成金・採用の3方向で、同じ登録が効いてくることになります。「まだ登録していない」という会社にとっては、判断の材料がまたひとつ増えた形です。
千葉・東葛の会社が、いまできること
- CCUSの登録状況を数えてみる 技能者のうち何人が登録済みか、そのうち詳細型は何人か。助成金を考えるなら、ここが出発点です
- 能力評価のレベル判定を受けた人がいるか確認する レベルが上がった人がいれば、賃上げ5%で助成の対象になり得ます
- 地元の高校との接点を考えておく 「つなぐ化」事業や高校内企業説明会は、来年度も続く見込みです。受け入れ側の体制は、いまから考えておいて損はありません
- 12月の政府案を待つ 金額が固まるのはそこからです。いま慌てて動く必要があるのは、既に使える助成金だけです



概算要求は、国が来年どこにお金を使うつもりかを、8月のうちに教えてくれる資料です。決定ではありませんから、そのまま真に受ける必要はありません。



ただ、うちの場合はCCUSをどうするかを決めないと、どの話にも乗れないということだね



そういうことになります。そこだけは、12月を待つ理由がありません。



CCUSの事業者登録・技能者登録、建設事業主等に対する助成金の申請、経営事項審査の準備についてご相談を承っております。松戸市・柏市をはじめ、千葉県内の建設会社様からお声がけをいただいております。どうぞお気軽にどうぞ。
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今回の要求と直接つながる記事を並べました。






参考
最終更新日:2026年9月11日 / 本記事の金額はいずれも令和9年度の概算要求額であり、確定した予算額ではありません。政府案は12月に閣議決定されます。助成金の要件・支給額・様式は年度ごとに改定されますので、申請にあたっては必ず厚生労働省の最新の支給要領と、千葉労働局・ハローワークの案内をご確認ください。
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