のしいか所長新制度への移行のご相談で、最後まで決まらないことが多いのが「利用定員を何人にするか」です。



いまの在籍に合わせればいいのか、少なめにしておいたほうが得なのか……。



利用定員は、単価・加算・減額調整の三つに同時に関わる数字です。どれか一つだけを見て決めると、別のところで損をします。順に整理します。
前提——認可定員と利用定員は、別の数字です
施設型給付幼稚園には、定員が二つあります。ここが混ざっていると、話が噛み合いません。
| 認可定員(収容定員) | 利用定員 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 学校教育法(学則に定める) | 子ども・子育て支援法(確認で定める) |
| 決めるのは | 千葉県知事(学則変更の認可) | 園のある市町村 |
| 何に関わるか | 受け入れられる上限 | 施設型給付費の単価・加算・減額調整 |
市町村は、申請に基づいて1号・2号・3号の認定区分ごとに利用定員を定めます(子ども・子育て支援法第31条)。園が申し出た数字が、そのまま決まるわけではありません。市町村の子ども・子育て支援事業計画にある需給の見込みと突き合わされます。
利用定員が関わる、三つのところ
① 基本分単価の「定員区分」
幼稚園の基本分単価は、地域区分・定員区分・認定区分・年齢区分の組合せで決まります。このうち定員区分は、「教育標準時間認定子どもに係る利用定員の総和」で決まります。実際の在籍数ではありません。
同じ地域区分であれば、定員区分が小さいほど子ども1人当たりの単価は高く設定されています。「少なめに置いたほうが得では」という発想は、ここから出てきます。
② 加算の要件と、上限
いくつかの加算は、利用定員の人数そのものを要件にしています。令和8年4月8日最終改正の留意事項通知(幼稚園・別紙1)で確認できるものを並べます。
| 利用定員(教育標準時間認定) | 関係する項目 |
|---|---|
| 31人以上300人以下 | 学級編制調整加配(基本分単価の職員構成に教員1人を含みます) |
| 35人以下、または121人以上 | 講師配置加算 |
| 91人以上 | 事務職員配置加算 |
| 271人以上 | 指導充実加配加算、事務負担対応加配加算 |
チーム保育加配加算は、加配できる人数の上限が利用定員の区分で決まります。
| 利用定員 | 加配人数の上限 |
|---|---|
| 45人以下 | 1人 |
| 46〜150人 | 2人 |
| 151〜240人 | 3人 |
| 241〜270人 | 3.5人 |
| 271〜300人 | 5人 |
| 301〜450人 | 6人 |
| 451人以上 | 8人 |
30人と31人、90人と91人、120人と121人。1人の違いで、教員1人分や事務職員1人分の算定が変わる境目があります。定員を決める前に、この表を一度ご覧ください。
③ 減額調整の判定基準
三つめが、定員を超えて受け入れたときの減額調整です。ここが本題です。
減額調整のライン——「2年度間・常に・120%」
留意事項通知は、「定員を恒常的に超過する場合」の調整として、次の両方にあてはまる施設に適用するとしています。
- 直前の連続する2年度間、常に利用定員を超えている
- 各年度の年間平均在所率が120%以上である
年間平均在所率は、通知にこう書かれています。
年間平均在所率 = 各月初日の利用子ども数の総和 ÷ 各月初日の利用定員の総和
「各月初日」で数えるところが大事です。月の途中の入退園ではなく、毎月1日の在籍で見ます。
計算してみます
利用定員90人の園で、各月1日の在籍が毎月108人だったとします。
108人 × 12か月 ÷(90人 × 12か月)= 120%
120%「以上」ですので、ちょうど120%でも基準に届きます。これが2年度続けば、減額調整の対象です。同じ在籍で利用定員を91人にしておけば、在所率は約118.7%で、基準を下回ります。
適用されると、何が減るか
減額調整は、基本分単価だけの話ではありません。基本分単価から、経営情報等の報告を行っていない場合の調整までの額の総和に、利用子ども数の区分と地域区分等に応じた調整率を掛ける方式です(副食費徴収免除加算は除かれます)。
加算を積み上げている園ほど、影響額は大きくなります。
利用定員の見直しが行われた場合などには、見直しの日の属する月の翌月から調整は外れます(月の初日に要件を外れた場合は、その月から)。ただし通知は同時に、この状態の施設には市町村が利用定員の見直しに向けた指導を行うこととしています。



もう一点、移行前から認可定員を超えて受け入れていた園には注意が要ります。通知では、確認を受ける前から認可定員を超過していた私立幼稚園について、都道府県の判断により、法の施行当初または確認を受けた時から減算を適用することも可能とされています。千葉県がこの扱いをどう運用しているかは未確認です。該当しそうな園は、移行前に県へ確かめてください。
少なめに置く、四つの落とし穴
単価が上がり、在所率120%までは減額もない。そう考えると、利用定員を在籍より少なめに置きたくなります。しかし、次の四つがあります。
1.定員の範囲内での受入れが、原則です
運営基準は、やむを得ない事情がある場合を除き、利用定員を超えて教育・保育の提供を行わないことを求めています(運営基準第22条ただし書)。やむを得ない事情に当たるかどうかは、市町村の判断に委ねられます。
こども家庭庁の資料にも、「私立幼稚園が認可定員を遵守することが原則であるとの考えは何ら変わるものではなく」「認可定員を超過した受入れが一定の要件のもとで認められ得るものと考えているものではなく」とあります。
ここを取り違えないでください。120%は「そこまでは減額しない」という線であって、「そこまで受け入れてよい」という線ではありません。超えて受け入れる場合でも、その人数で幼稚園設置基準などを満たしていることが前提です。
2.願書の時期に、選考が必要になります
申込みが利用定員を超えた場合は、選考を行うことになります。こども家庭庁の資料では、①抽選、②先着順、③建学の精神等、設置者の理念に基づく選考——といった方法により、あらかじめ選考方法を明示したうえで行うことが求められるとされています。
定員を少なめに置くほど、この場面が早く来ます。11月の願書受付で慌てないよう、選考方法は募集要項の段階で決めて、書いておいてください。
3.加算の境目を、下にまたぐことがあります
在籍95人の園が利用定員を90人に置くと、事務職員配置加算(91人以上)の対象から外れます。在籍122人の園が120人に置くと、講師配置加算(121人以上)の対象から外れます。
単価が上がった分より、失う加算のほうが大きいこともあります。単価表で、両方を計算してから決めてください。
4.あとから増やすほうが、時間がかかります
利用定員を減らすときは、3か月以上の予告期間を設けることとされています。増やすときは、市町村に確認の変更を申請します。市町村での協議を経ますし、増やせるのは認可定員の範囲までです。
認可定員そのものを増やす場合は、千葉県で学則変更(収容定員の変更)の認可を受けることになります。申請書のほかに、施設概要書・学級編成表・設置後2か年の事業計画書・収支予算書・学(園)則変更条項及び新旧対照表など、添付書類がそろいます。
多めに置く場合にも、損があります
反対に、在籍よりかなり多く置くと、定員区分が上がって1人当たりの単価が下がります。実際の在籍が少ないままでは、低い単価に、少ない人数を掛けることになります。
減額調整を避けるために余裕を持たせすぎるのも、得策ではありません。
決め方の手順
| 手順 | やること |
|---|---|
| 1 | 過去3年分の、各月1日の在籍数を並べる |
| 2 | 来年度以降の入園見込みを置く(願書、未就園児クラス、地域の出生数) |
| 3 | 見込み在籍 ÷ 1.2 を出し、それを上回る数を利用定員の下限の目安にする |
| 4 | その近くにある境目を確認する(31・35・91・121・271人など) |
| 5 | 候補を2〜3案に絞り、単価表で年間の給付費を比べる |
| 6 | 認可定員の範囲内か確認し、市町村へ事前に相談する |
手順3では、ちょうど割り切れる数字にご注意ください。見込み在籍が108人なら、108 ÷ 1.2 = 90。しかし90人では、ちょうど120%になります。91人以上が目安です。



単価表は年度ごとに改定されます。比較は、移行予定年度の単価で行ってください。年度途中の改定で遡って精算されることもありますので、試算はやや控えめに見ておくのが実務的です。
千葉県での窓口
| 何を | どこへ |
|---|---|
| 認可定員(収容定員)の変更 | 千葉県 総務部学事課 私学振興班(学則変更の認可) |
| 利用定員の設定・変更 | 園のある市町村(松戸市であれば子ども部。現在の担当課名は未確認です) |
市町村によって、利用定員の変更を子ども・子育て会議に諮るかどうかや、事前協議の時期が違います。来年度4月から変える場合は、少なくとも3か月の予告期間より相当前に、相談を始めてください。
今日から着手したい、5つの点検
- 過去3年分の、毎月1日の在籍数を表にする
- 年間平均在所率を、いまの利用定員(移行前なら仮の定員)で計算する
- 在籍見込みの近くにある加算の境目を、上の表で確認する
- 認可定員と、移行後に置きたい利用定員の差を確認する
- 願書を出す前に、定員を超えたときの選考方法を募集要項に書く
1と2は、園児名簿から半日で出ます。数字を出してから、市町村との相談に臨んでください。
当事務所にできること
- 年間平均在所率の試算——過去3年分の各月1日の在籍から
- 利用定員の案の比較——単価表を使って、2〜3案の年間給付費を並べます
- 加算の境目の確認——その定員で、どの加算が付き、どれが外れるか
- 市町村・千葉県への事前相談の準備——説明資料の組み立てから
- 募集要項の選考方法の書き方
千葉県松戸市を中心に、東葛エリアの幼稚園・認定こども園の皆様のお手伝いをしております。利用定員の試算から、どうぞお気軽にお声がけください。
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参考にした資料
- こども家庭庁成育局長・文部科学省初等中等教育局長「特定教育・保育等に要する費用の額の算定に関する基準等の実施上の留意事項について」(令和5年5月19日/最終改正 令和8年4月8日)
- こども家庭庁「子ども・子育て支援新制度【幼稚園に関すること】」(事業者向けQ&A)
- こども家庭庁「子ども・子育て支援法に基づく教育・保育給付認定等並びに特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業者の確認に係る留意事項等について」
- 松戸市「確認を受ける施設・事業の運営基準について」(松戸市子ども・子育て会議資料)
- 千葉県「収容定員変更認可申請書」(総務部学事課 私学振興班)
- 子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)
- 特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業並びに特定子ども・子育て支援施設等の運営に関する基準(平成26年内閣府令第39号)
最終更新日:2026年10月20日 / 本記事は令和8年10月20日時点で公表されている資料にもとづいています。単価と加算の額は年度ごとに改定されます。千葉県における「確認前からの認可定員超過」の取扱い、収容定員変更認可の受付時期と審査日程、松戸市の担当課名は、いずれも未確認です。実際の手続は、市町村および千葉県総務部学事課へ事前にご相談ください。
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