のしいか所長11月1日に、建築基準法施行令の改正が施行されます。



採光の規制が緩むと聞いた。園舎の設計にも関わってくるのかい



そこが、いちばん読み違えやすいところです。政令の文言だけを読むと、園にも関わるように見えます。ところが告示案まで読むと、外れるのは老人デイサービスセンターだけでした。順を追ってご説明します。
令和8年9月11日に閣議決定、9月16日に公布された建築基準法施行令の一部を改正する政令(令和8年政令第284号)が、令和8年11月1日に施行されます。
柱は4つ。工務店の皆さまに関わる順に並べ替えて、要点をまとめます。あわせて、10月26日17時まで意見募集にかかっている告示案——この中身を読まないと、改正の本当の範囲が分からない部分がありますので、そこも押さえます。
改正の柱は、4つです
| 何が変わるか | どなたに関わるか |
|---|---|
| 採光規制の対象の合理化 児童福祉施設等から、衛生上支障がないものとして大臣が定めるものを除外 | デイサービスを建てる方 (園ではありません。後述します) |
| 防火上・避難上の規制の対象の合理化 層間変形角/面積区画/竪穴区画から、一定の建築物を除外 | 小規模な建築物・付属建築物を建てる方 |
| 型式適合認定の類型の追加 構造耐力に係る規定の適合についての型式を追加 | 型式適合認定を使う方 |
| 用途地域における危険物の総量規制の合理化 一定の設備で貯蔵・処理される圧縮ガス・可燃性ガスを危険物から除外 | ガス設備を置く建物を建てる方 |
公布は9月16日、施行は11月1日。報道発表に経過措置の記載はありません。
採光規制——園ではなく、デイサービスでした
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
政令だけ読むと、園に関わるように見えます
報道発表の文言は、こうです。
採光規制の対象となる児童福祉施設等から、……衛生上支障がないものとして国土交通大臣が定めるものを除外します。
「児童福祉施設等」。この言葉を見れば、保育所や認定こども園が頭に浮かびます。実際、当初はそう読める記事がいくつも出ました。
新旧対照表を見ると、話が変わります
改正されたのは、建築基準法施行令第19条第2項第四号の括弧書きだけです。
| いまの条文 | 児童福祉施設等(保育所を除く。) |
| 11月1日から | 児童福祉施設等(保育所及び利用者の滞在時間が短いことその他の理由により衛生上支障がないものとして国土交通大臣が定めるものを除く。) |
お気づきでしょうか。保育所は、もともと除かれています。今回の改正で新しく外れるわけではありません。「保育所の採光規制が緩和される」という話では、まったくありません。
では、何が外れるのか——告示案の本文です
「国土交通大臣が定めるもの」の中身が、いま意見募集にかかっている告示案です。案文は、たった一文です。
建築基準法施行令第十九条第二項第四号の衛生上支障がない建築物は、老人福祉法第二十条の二の二に規定する老人デイサービスセンター(老人福祉法施行規則第一条の三の二に規定する第一号通所事業の用にのみ供するものに限る。)とする。
老人デイサービスセンターだけです。しかも「第一号通所事業の用にのみ供するものに限る」という、二重の絞りが掛かっています。
幼稚園・保育所・認定こども園の記載は、案文にも概要にもありません。
「第一号通所事業」とは
介護予防・日常生活支援総合事業の、通所型サービスのことです。要支援の方などが通う、いわゆる総合事業のデイサービス。
告示案は「の用にのみ供するもの」としています。介護保険の通所介護(要介護の方のデイサービス)と一緒にやっている施設は、文言どおりに読めば当たりません。ここは相当に狭い指定です。


告示案は、10月26日17時まで意見募集中です
令和8年9月26日17時から、10月26日17時まで。所管は国土交通省住宅局建築指導課と、参事官(建築企画担当)付です。
制定・改正される告示は4つ。題名は次のとおりです。
- 採光のための窓その他の開口部を設けることを要しない衛生上支障がない建築物を定める件
- 地上部分の層間変形角を百五十分の一以内とすることを要しない建築物を定める件
- 防火区画を設けることを要しない建築物を定める件
- 建築基準法施行令第百三十六条の二の十一第一号イ(2)等の国土交通大臣の指定する構造方法を定める件等の一部を改正する告示
意見は、10月26日17時まで出せます
パブリックコメントは、誰でも出せます。電子政府の総合窓口(e-Gov)の意見提出フォームから提出でき、提出先は意見募集要領に示されています。資料は国土交通省住宅局建築指導課の窓口でも配布されています。
「老人デイサービスセンターだけでは狭すぎる」「第一号通所事業の用にのみ供するもの、という限定は実態に合わない」——現場でそうお感じになるなら、それを伝えられる最後の機会がここです。告示が公布されてからでは、次の改正を待つことになります。
防火・避難——外れるのは、3つの類型です
こちらのほうが、工務店の皆さまには関わりが大きいかもしれません。層間変形角(令第109条の2の2)、面積区画・竪穴区画(令第112条)から、一定の建築物が外れます。
| 外れる建築物 | 層間変形角 | 面積区画 | 竪穴区画 |
|---|---|---|---|
| 階数3・延べ面積500㎡以下などの基準に適合するもの (防火地域内を除く) | 対象のまま | 外れます | 外れます |
| 延べ面積50㎡以内の平屋の付属建築物 (外壁・軒裏が防火構造) | 外れます | もともと対象外 | 外れます |
| 卸売市場の上家、機械製作工場など これらと同等以上に火災の恐れが少ない用途で、主要構造部が不燃材料 | 外れます | 外れます※ | 外れます |
2段目の「50㎡以内の平屋の付属建築物」が、実務ではいちばん当たります。車庫、物置、作業場。外壁と軒裏を防火構造にしておけば、竪穴区画が外れます。
残り2つの柱
型式適合認定に、構造耐力の型式が加わります
これまでの3類型に、「建築物の構造耐力に係る規定の適合についての型式」が加わります。
ねらいは、建築資材の調達が難しいときに、構造耐力の審査省略と個別の確認を柔軟に組み合わせられるようにすることです。あわせて、認定型式適合建築物の確認に必要な図書を定める告示(平成28年告示第698号)も改正され、主要構造部・天井・防火設備の荷重や、貯水タンクなど大規模設備の荷重に関する事項を明示した図書が加わります。
用途地域の危険物から、一定のガスが外れます
一定の基準に適合する設備で貯蔵・処理される圧縮ガス及び可燃性ガスを、用途規制における危険物から除外します。
11月1日をまたぐ物件で、気をつけること
- いま確認申請の準備をしている物件——緩和を当てにするなら、確認済証の交付がいつになるかを設計者とすり合わせてください
- 告示の公布は10月末の予定です。それまで最終的な基準は確定しません
- 報道発表に経過措置の記載はありません。施行日前後の扱いは、所管の建築主事・指定確認検査機関にご確認ください
- 緩和は「使わなければならない」ものではありません。いまの設計で通るなら、無理に合わせる必要はありません
なお、国土交通省は改正建築基準法のポイントを解説するリフォーム事業者向け説明会も開催しています。「第1部 建築基準法の基本的な事項」「第2部 既存建築物の現況調査」「第3部 改修の際の基準緩和」の3部構成で、参加費は無料。対象は設計者を含むリフォーム事業者と、建築確認の審査者です。日程は別紙とされており、本記事では確認できていません。
お施主様には、どう説明するか
この改正は、ニュースの見出しだけが先に広まる種類のものです。「規制が緩くなったそうだから、窓を小さくできないか」——そうお尋ねになるお施主様が出てきます。
そのときに、こうお答えになれるかどうかです。
- 住宅には関わりません。今回動いたのは、児童福祉施設等に関する号の括弧書きです
- 保育所は、もともと採光規制の対象から外れています。今回の改正で変わったことではありません
- 新しく外れるのは、老人デイサービスセンターのうち総合事業の通所型サービス専用のものだけです
- 防火・避難のほうは、付属建築物などで当たることがあります。こちらは設計者にご確認ください
「緩和されました」と「御社の計画に当たります」は、別の話です。ここを分けてお伝えできる会社は、信用が積み上がります。当たらないことを、根拠を添えて説明する。それも仕事のうちです。
なお防火・避難の緩和について、国土交通省の資料は「一定の用途・構造の建築物は安全上問題がないという技術的知見が得られた」ことを理由に挙げています。思いつきで緩めているわけではありません。裏を返せば、その知見の範囲を外れる建物には、これまでどおりの規制が掛かります。
この記事で、お伝えしたかったこと
改正の中身よりも、読み方のほうかもしれません。
政令の見出しだけを読むと「児童福祉施設等の採光規制が緩む」。
新旧対照表を読むと「保育所はもともと外れていた」。
告示案を読むと「外れるのは老人デイサービスセンターだけ」。
3段階あります。途中で止めると、お施主様に違う説明をしてしまいます。「大臣が定めるもの」と書いてあったら、その告示を見にいく。——建築基準法令を読むときの、いちばん基本の作法です。


当事務所にできること
はじめにお断りしておきます。確認申請の代理は、建築士の業務です。当事務所はお受けできません。
そのうえで、周りの手続きをお手伝いしています。
- 建設業許可の取得・更新・業種追加
- 解体工事業の登録
- デイサービスの指定申請(介護保険法・老人福祉法)
- 工事請負契約書・見積書の整備
- 補助金のご相談
千葉県松戸市から、松戸・柏・流山・我孫子・鎌ケ谷を中心にうかがっています。「うちの計画に関わるのか」の一点だけでも、お気軽にお尋ねください。
参考にした資料
- 国土交通省「『建築基準法施行令の一部を改正する政令』を閣議決定」(令和8年9月11日)および新旧対照表
- 「建築基準法施行令の一部を改正する政令の施行に伴う関係告示等の制定及び改正案に関する意見募集」(令和8年9月26日公示・10月26日17時締切)の概要および案文
- 国土交通省「住宅ストック活用のため、改正建築基準法のポイントを解説!~リフォーム事業者向け説明会の開催~」(令和8年9月8日)
ー紺野事務所へのお問い合わせは ー


コメント