のしいか所長10月から11月にかけて、解体の現場に立入検査が入ります。



リサイクルの話だろう。分別はきちんとやっているから大丈夫だ



それが、今回は少し違います。入るのは4つの部局です。リサイクルの担当課、環境部局、労働基準監督署、そして地方出入国在留管理官署。見られるのは、分別だけではありません。
令和8年9月30日、国土交通省が「建設リサイクル全国一斉パトロールを実施します」と発表しました。10月が3R(リデュース・リユース・リサイクル)推進月間であることに合わせた、毎年の取組です。
ただ、報道発表の本文を読むと、「リサイクルのパトロール」という名前から想像するより、だいぶ広い話でした。解体工事を手がけておられる方、解体を伴う工事を発注される工務店の方に向けて、要点をまとめます。
パトロールは1つ。でも、見る人は4ついます
報道発表の原文です。
建設リサイクル法担当部局、環境部局、各都道府県労働局の労働基準監督署及び地方出入国在留管理官署が合同で実施。
実施するのは各都道府県及び特定行政庁。そこへ、国の機関が2つ加わります。
| 入る人 | 見るもの |
|---|---|
| 建設リサイクル法担当部局 | 分別解体等・再資源化等の実施/届出・標識・記録 |
| 環境部局 | 石綿(アスベスト)の事前調査・届出ほか |
| 労働基準監督署 | 労働安全衛生法の遵守状況 |
| 地方出入国在留管理官署 | (在留資格に関わる確認) |
点検項目として挙げられているのは、次の3つです。
- 建設リサイクル法の遵守状況の確認
- 建設発生土の有効利用に関する取組状況の確認
- フロン排出抑制法や労働安全衛生法など、関連法令の遵守状況の確認
地方出入国在留管理官署が合同で入る、という一行の重みです。現場で働いている方の在留資格が、リサイクルのパトロールと同じ日に確認される——そう読める書き方になっています。外国人技能者を受け入れておられる会社は、名簿と在留カードの控えを整えておいてください。
実施は10月頃から11月頃
期間は「令和8年10月頃 ~ 令和8年11月頃まで」。ただし注記があります。
※上記は概ねの期間であり、都道府県・市区町村により実施期間は異なる。
指導の8割以上は、同じ1か所です
ここが、本文を読んでいちばん驚いたところです。昨年度10月の実施結果が、報道発表資料に載っています。
| 件数 | |
|---|---|
| パトロールの立入り | 4,919現場 |
| 建設部局による指導等 | 374件 |
| うち 標識の掲示 | 310件 |
| 分別解体 | 18件 |
| その他 | 30件 |
| 事前措置 | 10件 |
| 無届工事 | 6件 |
374件のうち310件、8割以上が「標識の掲示」です。分別解体の指導は18件、無届工事は6件しかありません。
これは、その年だけの偏りではありません。令和4年度の実施結果も、立入り5,285現場・指導等327件のうち、標識の掲示が287件——同じ形です。
つまり、現場に看板を出しているかどうか。分別の中身でも、処理のルートでもありません。いちばん安く、いちばん確実に防げるところで、指導の8割が出ています。
標識を出していないと、10万円以下の過料です
千葉県のページに、罰則の一覧があります。建設リサイクル法で標識の掲示を定めているのは第33条で、怠った場合は10万円以下の過料(第53条第3号)。
金額としては小さく見えます。ただ、立入りを受けて指導票が出れば、発注者にも元請にも知られます。次の仕事に響くのは、過料の10万円ではなく、そちらのほうです。
千葉県では、標識にシールを貼ります
千葉県には、独自の運用があります。千葉県建設リサイクル実施要領の第5条、「届出・通知済みシールの交付等」です。
無届出工事の抑止、発注者・受注者・周辺住民等の意識向上等に寄与することを目的として、届出(通知)済シールの標識への貼付を求める
標識に、届出済みのシールを貼る。裏を返せば、シールのない標識は、遠目にも分かります。千葉県で解体をされるなら、ここは押さえておいてください。
そもそも、どの工事が対象になるのか
「うちの工事は対象なのか」が分からないまま進めている現場が、少なくありません。規模の基準は、はっきり決まっています。
| 工事の種類 | 規模の基準 |
|---|---|
| 建築物の解体 | 床面積の合計 80㎡以上 |
| 建築物の新築・増築 | 床面積の合計 500㎡以上 |
| 建築物の修繕・模様替等(リフォーム等) | 請負代金の額 1億円以上 |
| 建築物以外の工作物の工事(土木工事等) | 請負代金の額 500万円以上 |
解体は80㎡から。木造の戸建て1棟で、たいてい超えます。「小さい現場だから対象外だろう」は、まず成り立ちません。
2つめの項目「建設発生土」が、近年いちばん動いています
点検項目の2つめ、「建設発生土の有効利用に関する取組状況の確認」。報道発表には、この一行しか書かれていません。何を見られるのかは、読み取れません。
ただ、この分野は令和5年から令和6年にかけて、立て続けに義務が重くなりました。熱海の盛土崩落を受けた一連の見直しです。見られるとすれば、この辺りになります。
| 時期 | 何が変わったか |
|---|---|
| 令和5年1月1日 | 計画の作成対象が拡大(建設発生土は1,000m³以上 → 500m³以上)/保存期間が1年から5年へ/発注者への説明/現場への掲示 |
| 令和5年5月26日 | 搬出先が盛土規制法の許可を受けた場所かどうかの事前確認/受領書による確認/ストックヤードの登録制度 |
| 令和6年6月1日 | 最終搬出先までの確認義務 |
500m³以上の建設発生土を搬出する工事では、元請業者に次のことが求められます。
- 再生資源利用促進計画を作り、運搬事業者に通知する
- 計画を発注者に提出し、内容を説明する
- 計画を現場に掲示する
- 搬出先が盛土規制法の許可地かどうかを事前に確認し、確認結果票を計画に添付して現場に掲示する
- 搬出先に受領書の交付を求める
- さらに別の場所へ運ばれた場合は、最終搬出先まで確認した書面を作る
- 再生資源の利用促進に関する責任者を配置する
- これらを工事完成後5年間保存する
ここでも「現場に掲示する」が出てきます。標識、石綿のあり/なしの掲示、そして発生土の計画と確認結果票。立入りに来た方が最初に目にするのは、現場に貼ってある紙です。中身の書類が揃っていても、掲示が抜けていれば、そこから見られます。
現場に置いておく書類を、1枚で
国土交通省が「建物の解体工事に必要な主な手続き」というチェックリストを公表しています。3つの系統が1枚に並んでいて、今回のパトロールの備えにそのまま使えます。
① 建設リサイクル法の系統
- 元請業者から発注者への説明(契約前・書面で)
- 工事の届出(7日前まで)
- 下請業者への届出事項の告知
- 工事現場における商号、名称等に関する標識の掲示
- 適切な技術管理者の配置
- 元請業者による再資源化の完了に関する記録の作成
- 元請業者から発注者への再資源化等の完了に関する書面による報告
- 分別解体等の実施/特定建設資材廃棄物の再資源化の実施
② 労働安全衛生の系統(労働基準監督署が見ます)
- 特定元方事業者事業開始報告
- 安全に係る作業計画の策定等
- 建築物の鉄骨の組立て等作業主任者/コンクリート造の工作物の解体等作業主任者の選任
- 石綿があるときは——工事の計画書(開始14日前まで)、石綿作業主任者の選任と作業中の常駐、石綿特別教育、作業実施記録の作成
- 石綿業務の健康診断(雇入れ・配置替えの際と、その後6月以内ごとに1回)
③ 環境・フロンの系統
- アスベスト(石綿)含有建材の事前調査
- フロン製品(第一種特定製品)の有無の確認
- 発注者への説明(石綿・フロン製品の有無について)
- 石綿あり/なしなどの掲示
- 特定粉じん排出等作業実施届(大気汚染防止法)
- フロン類の引取証明書は3年保存
石綿は、②と③の両方に出てきます。労働者を守る側(労働安全衛生法・石綿則)と、近隣の空気を守る側(大気汚染防止法)で、別々の義務が掛かるためです。片方だけ整えても、もう片方で指摘されます。


解体工事業の登録を、お忘れではありませんか
最後に、いちばん重い罰則の話をします。
建設業許可(土木・建築・解体)をお持ちでない会社が解体工事を請け負うには、解体工事業の登録が要ります。登録をせずに営業した場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金(第21条第1項・第48条)。登録の更新を忘れた場合も同じ扱いです。
| 何を怠ったか | 罰則 |
|---|---|
| 解体工事業の無登録営業・更新切れ | 1年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
| 分別解体等・再資源化等の実施命令に違反 | 50万円以下の罰金 |
| 対象建設工事の届出をしない | 20万円以下の罰金 |
| 技術管理者を置かない | 20万円以下の罰金 |
| 立入検査を拒む | 20万円以下の罰金 |
| 標識を掲示しない | 10万円以下の過料 |
| 帳簿を備えない・保存しない | 10万円以下の過料 |
いま、何をしておくか
- いま動いている現場の標識を見に行く(千葉県なら、届出済シールが貼ってあるかも)
- 解体工事業の登録の有効期限を確かめる(5年。通知書の日付)
- 届出の控えと、完了報告の書面が現場ごとに揃っているかを確かめる
- 石綿の事前調査の記録を出せるようにしておく(②と③の両方)
- 外国人技能者がいる現場は、名簿と在留カードの控えを整える
- 発注者への事前説明の書面を、契約書類と一緒に保管する
1項めは、今日できます。現場を1周して、標識の写真を撮っておく。それだけで、指導の8割が起きている場所を外せます。
当事務所にできること
- 解体工事業の登録・更新(千葉県)
- 産業廃棄物収集運搬業の許可
- 建設業許可(解体工事業)への切り替えのご相談
- 対象建設工事の届出と、発注者への説明書面の整備
- 外国人技能者の在留資格に関する手続き
- 安全衛生管理体制の整備と、作業主任者・特別教育の記録(社会保険労務士として)
- 立入検査を受けたあとの、指導への対応
千葉県松戸市から、松戸・柏・流山・我孫子・鎌ケ谷を中心にうかがっています。「うちの現場、何を揃えておけばよいか」——パトロールの前に、一度ご相談ください。


参考にした資料
- 国土交通省「建設リサイクル全国一斉パトロールを実施します~10月は3R(リデュース・リユース・リサイクル)推進月間です~」(令和8年9月30日)および同報道発表資料
- 国土交通省「建設リサイクル法等に係る全国一斉パトロールの実施結果」(令和4年12月1日)
- 国土交通省「建設リサイクル法の対象となる建設工事では届出が必要です!」
- 国土交通省「建物の解体工事に必要な主な手続き」
- 千葉県「建設リサイクル法について」「建設リサイクル法の罰則」
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