
先日の「資格の全体地図」は読みました。それで、うちの若いのには、次に何を取らせればいいんでしょうか。



いちばん多いご質問です。前回は資格を「何のため」で分けました。今回は「誰が」で並べ直します。入ったばかりの方から、大きな現場を任される方まで——順番にたどります。
先日、建設業の資格を「何のために要るのか」で3つに分けた記事を書きました。おかげさまで、そのあと「では、誰が、いつ、何を取るのか」というご質問を続けていただいています。
この記事は、その続きです。資格を法律の名前ではなく、社内の段階で並べ直します。入ったばかりの方、人を使う立場になる方、現場を任される方、大きな現場を任される方——この4段です。


現場には、2本の道があります
先に、全体の形をお見せします。建設業で現場に出る方の進み方は、大きく2本に分かれます。
| 施工管理の道 | 技能の道 | |
|---|---|---|
| やること | 現場を回す。工程・品質・安全・原価を管理する | 手を動かす。とび、型枠、鉄筋、配管、内装——職種の腕を上げる |
| めざす資格 | 施工管理技士(2級 → 1級) | 技能士・登録基幹技能者 |
| 法律の上での行き先 | 主任技術者 → 監理技術者 | 職長 → 登録基幹技能者 |
| 評価のされ方 | 経営事項審査の技術職員 | CCUSのレベル1〜4 |
この2本は、平成30年につながりました
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
かつては「職人のままでは、現場を任される立場にはなれない」と言われてきました。いまは違います。平成30年4月1日から、登録基幹技能者の講習を修了した方は、主任技術者の要件を満たす者として認められています。
技能の道を上りきった方が、そのまま現場の技術者になれます。根拠は建設業法施行規則第7条の3の改正(平成29年11月10日公布・施行)と、国土交通省告示第435号(平成30年3月15日)です。詳しくは③の節に書きました。
① 入ったばかりの方(0〜3年)
この段は、本人が取る前に、会社がやることがあります。
まず、雇入れ時の教育です
労働安全衛生法第59条第1項。労働者を雇い入れたときは、その業務に関する安全衛生教育を行わなければなりません。雇用形態や国籍にかかわらず、すべての労働者が対象です。日雇いでも、アルバイトでも、外国人技能者でも同じです。
教育の項目は8つ。機械や原材料の危険性と取扱い方法、安全装置や保護具の性能と取扱い、作業手順、作業開始時の点検、業務に関する疾病の原因と予防、整理整頓、事故時の応急措置と退避、その他安全衛生に必要な事項です。
次に、その作業に就くための資格です
ここは前回の記事に詳しく書きました。免許・技能講習・特別教育の3つがあり、同じ作業でも大きさで区分が変わります。3t・1t・5t・10m——この4つの数字です。
入られたばかりの方が、はじめに取ることが多いのは、おおむねこのあたりです。
| よく取るもの | 区分 | 行うところ |
|---|---|---|
| 玉掛け(つり上げ荷重1t以上) | 技能講習 | 登録教習機関 |
| 玉掛け(1t未満) | 特別教育 | 会社(事業者) |
| 足場の組立て等 | 特別教育 | 会社(事業者) |
| フルハーネス型墜落制止用器具 | 特別教育 | 会社(事業者) |
| 小型移動式クレーン(つり上げ荷重1t以上5t未満) | 技能講習 | 登録教習機関 |
ここで差がつきます。技能講習は修了証が出ますので、本人も会社も忘れません。抜けやすいのは特別教育のほうです。会社が行うものですから、記録も会社に残します。「やったはずだが、記録がない」は、やっていないのと同じ扱いになります。
17歳から、2級の第一次検定が受けられます
意外に知られていないところです。令和6年度から技術検定の受検資格が変わり、2級の第一次検定は17歳以上なら誰でも受けられます。高校在学中に取れます。1級の第一次検定も19歳以上で受けられます。
第一次検定に受かると「技士補」になります。第二次検定は、そのあとの実務経験で受けます。つまり、実務経験を積みながら待つのではなく、先に学科だけ取っておけます。入られて1年目2年目の方に、いちばんお勧めしたい一手です。


② 人を使う立場になる方(職長)
現場で人に指示を出すようになったら、職長教育です。
職長教育は、学科12時間です
労働安全衛生法第60条。建設業は対象業種です。(ほかに製造業の一部、電気業、ガス業、自動車整備業、機械修理業が対象です。)
対象になるのは「新たに職務につくことになった職長その他の作業中の労働者を直接指導監督する者」。肩書が「職長」でなくても、人に指示を出す立場になれば対象です。班長でも、主任でも同じです。
| 教育 | 時間 | 中身 |
|---|---|---|
| 職長教育 | 学科12時間 | 作業方法の決定と労働者の配置、作業の指導監督、危険性・有害性等の調査 ほか5項目 |
| 職長・安全衛生責任者教育 | 14時間 | 上の12時間に、安全衛生責任者の職務などを足したもの |
| 再教育(能力向上教育に準じた教育) | 340分 | 講義120+60+30分、グループ演習130分 |
安全衛生責任者は、下請の側が選びます
ここは建設業に独特のところです。元請が統括安全衛生責任者を置く現場では、下請の各社が安全衛生責任者を選任します(労働安全衛生法第16条)。
この2つは別の制度ですが、実務では同じ方が両方を担うのがふつうです。だから講習も「職長・安全衛生責任者教育」という1本にまとまっています。下請として現場に入る会社であれば、14時間のほうを受けておくのが無駄がありません。
概ね5年ごとに、再教育があります
一度受ければ終わり、ではありません。概ね5年ごと、または機械設備等に大きな変更があったときに、再教育を行うこととされています(平成29年2月20日付け基発0220第3号)。
CCUSのレベル2に、職長教育が要ります
建設キャリアアップシステム(CCUS)の能力評価は4段階。レベル2に上がるための条件に、職長教育が入っています。
とび職の例でいえば、レベル2は就業日数3年(645日)に加えて、玉掛け技能講習と職長・安全衛生責任者教育が必須、さらに12の資格のうち1つ以上。職長教育は、安全の話であると同時に、処遇の話でもあります。


③ 現場を任される方(主任技術者)
ここから建設業法の話に変わります。①と②は労働安全衛生法——「安全に働くため」の資格でした。③からは「会社が工事を請けるため」の資格です。
主任技術者は、すべての現場に置きます
請負代金の大小、元請・下請に関わらず、建設業者は工事現場に主任技術者を置かなければなりません。小さな工事だから要らない、ということはありません。
ここが、会社にとっていちばん重い話です。主任技術者になれる人がいなければ、その業種の工事は請けられません。人を採るか、育てるか、資格を取ってもらうか。どれも時間のかかる話です。
なり方は、4つあります
主任技術者の要件は、建設業法第7条第2号に書かれています。営業所技術者(一般建設業の営業所に置く技術者)と、同じ要件です。
| なり方 | かかる時間の目安 | |
|---|---|---|
| ① | 国家資格——2級施工管理技士など | 第一次検定は17歳から。いちばん早い道 |
| ② | 指定学科の卒業+実務経験 大学・高専・旧専門学校は3年以上 高校・専門学校は5年以上(専門士・高度専門士は3年以上) | 3〜5年 |
| ③ | 実務経験のみ——学歴・資格を問わず10年以上 | 10年 |
| ④ | 登録基幹技能者——講習を修了した方 平成30年4月1日から | 技能の道から渡れます |
②と③の差は、5年から7年です。指定学科を出ているかどうかで、これだけ変わります。ご自身やご子息の卒業学科が指定学科に当たるかどうかは、一度お調べになる値打ちがあります。
④が、いちばん新しい道です
登録基幹技能者——職種ごとの講習を修了した、技能者のいちばん上の位置づけです。CCUSの能力評価ではレベル4に当たります。
平成30年4月1日から、この修了者は主任技術者の要件を満たす者として認められています。根拠は建設業法施行規則第7条の3の改正と、国土交通省告示第435号(平成30年3月15日)です。
ただし、どの講習でもよいわけではありません。講習の職種ごとに、主任技術者になれる業種が決まっています。自社の許可業種と噛み合うかどうかが、分かれ目です。
| 登録基幹技能者講習 | 主任技術者になれる業種 |
|---|---|
| 鳶・土工/機械土工/トンネル/コンクリート圧送/基礎工/切断穿孔/グラウト | とび・土工工事業 |
| 型枠/建築大工 | 大工工事業 |
| 鉄筋/圧接 | 鉄筋工事業 |
| PC | とび・土工工事業、鉄筋工事業 |
| 配管/ダクト/冷凍空調 | 管工事業 |
| 電気工事 | 電気工事業、電気通信工事業 |
| 左官 | 左官工事業 |
| 建設塗装 | 塗装工事業 |
| 防水 | 防水工事業 |
| 内装仕上工事 | 内装仕上工事業 |
| 外壁仕上 | 塗装工事業、左官工事業、防水工事業 |
| 建築板金 | 板金工事業、屋根工事業 |
| タイル張り | タイル・れんが・ブロック工事業 |
| エクステリア | タイル・れんが・ブロック工事業、とび・土工工事業、石工事業 |
| 橋梁 | 鋼構造物工事業、とび・土工工事業 |
| 造園/運動施設 | 造園工事業ほか |
| サッシ・カーテンウォール | 建具工事業 |
| 硝子工事 | ガラス工事業 |
| 保温保冷 | 熱絶縁工事業 |
| 消火設備 | 消防施設工事業 |
| 海上起重 | しゅんせつ工事業 |
| 標識・路面標示 | とび・土工工事業、塗装工事業 |
4,500万円以上の現場は、専任です
主任技術者を置くだけでなく、その現場だけを受け持たせなければならない場合があります。
請負代金の額が4,500万円(建築一式工事は9,000万円)以上で、公共性のある施設・工作物や多数の方が利用する施設・工作物に関する重要な建設工事に当たる場合。このときは、工事現場ごとに専任の技術者を置きます。下請の会社も同じです。
専任になると、その人は他の現場に出せません。受注のときに「誰を専任にするか」が決まっていないと、契約はできても、現場が回らなくなります。人の手配は、見積りと同じくらい早い段階の話です。
④ 大きな現場を任される方(監理技術者)
最後の段です。下請に大きな金額を出す元請工事では、主任技術者に代えて監理技術者を置きます。
| いつ必要か | |
|---|---|
| 監理技術者 | 発注者から直接請け負った工事で、下請契約の請負代金の額の合計が5,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上になる場合 |
| 現場専任 | 請負代金の額が4,500万円(建築一式工事は9,000万円)以上の、公共性のある施設等に関する重要な工事 |
なり方は、2つです
- 1級の国家資格——1級施工管理技士、1級建築士、技術士など
- 主任技術者の要件を満たし、かつ指導監督的実務経験——元請として4,500万円以上の工事について、2年以上
専任のときは、資格者証と講習が要ります
監理技術者資格者証と監理技術者講習——この2つは一般財団法人建設業技術者センターが扱っています。講習には有効期限があり、切れていると専任の監理技術者として認められません。
1級を取った日が、終わりではありません。資格者証の交付を受け、講習を受け、期限が来たらまた受ける——ここから先は、会社が期限を管理する仕事になります。
1級技士補という、もう一段あります
1級の第一次検定に合格すると1級施工管理技士補になります。これに主任技術者の要件が加わると、監理技術者補佐になれます。
補佐を工事現場ごとに専任で置けば、監理技術者が複数の現場を兼ねられます(専任特例2号)。監理技術者が足りない会社にとって、いちばん現実的な手当てです。
並べ直すと、こうなります
ここまでを1枚にまとめます。左から右へ、社内の段階です。
| 段階 | 取るもの・受けるもの | 根拠 | 誰が行うか |
|---|---|---|---|
| 入った日 | 雇入れ時の教育(8項目) | 労働安全衛生法第59条第1項 | 会社 |
| 作業に就く前 | 免許/技能講習/特別教育 | 同法第59条第3項・第61条 | 労働局・登録教習機関・会社 |
| 17歳から | 2級の第一次検定(技士補) | 建設業法の技術検定 | 本人 |
| 人を使う立場 | 職長・安全衛生責任者教育(14時間) | 同法第60条・第16条 | 会社が受けさせます |
| (概ね5年ごと) | 再教育(340分) | 基発0220第3号 | 会社が受けさせます |
| 現場を任される | 2級施工管理技士/実務経験/登録基幹技能者 | 建設業法第7条第2号 | 本人 |
| 大きな現場 | 1級施工管理技士+資格者証+講習 | 同法第15条第2号・第26条 | 本人+会社が期限管理 |
この表を見て気づいていただきたいのは、はじめの2段が会社の仕事だということです。雇入れ時の教育と特別教育は、本人が「取りに行く」ものではありません。会社が行うものです。ここが抜けている会社が、いちばん多いところです。
よくいただくご質問
「10年待たないと、現場を任せられませんか」
いいえ。10年は、いちばん遅い道です。
2級施工管理技士を取れば、実務経験の年数に関わらず主任技術者になれます。第一次検定は17歳から受けられますので、早い方は入社前に半分終わっています。指定学科を出ていれば3年か5年。そして技能の道を上ってきた方なら、登録基幹技能者という4つめの道があります。
「10年経つのを待つ」は、会社にとっていちばん高くつく選び方です。その間、その方の分だけ現場を回せません。どの道がいちばん近いかは、人によって違います。学歴・職種・いまの経験年数——この3つで決まります。
「職長教育の費用は、会社が出すものですか」
職長教育は、事業者の義務です。労働安全衛生法第60条は「事業者は……安全又は衛生のための教育を行なわなければならない」という書き方をしています。本人が自腹で取ってくるもの、ではありません。
雇入れ時の教育と特別教育も同じです。①と②の段に出てくるものは、ほぼすべて会社側の義務とお考えください。本人が取るのは、③から先——施工管理技士と技能士です。
「資格を取ってもらったら、会社は何をしますか」
3つあります。
- 技術職員名簿に載せる——経営事項審査の様式第25号の14 別紙二です。審査基準日以前6か月を超える雇用期間が要りますので、決算日の直前に採った方は載りません
- CCUSに登録し、レベル判定を申請する——就業日数が積み上がる仕組みですので、登録が遅れた分だけレベルが上がるのも遅れます
- 一覧表を1枚作る——誰が、何を、いつ取ったか。有効期限のあるもの(監理技術者講習、登録基幹技能者の修了証)は、期限も一緒に
資格は本人のものですが、会社の許可要件であり、会社の点数でもあります。主任技術者になれる方が辞めれば、その業種の工事が請けられなくなります。「次の人」を決めておくこと——許可が止まるのは、たいてい人が辞めたときです。


当事務所にできること
はじめにお断りします。資格そのものの取得代行はできません。試験も講習も、ご本人に受けていただくものです。
- いまの人員で、どの業種の許可が維持できるかの棚卸し——誰が、どの業種の主任技術者になれるか
- いちばん近い道を探す——ご本人の学歴・職種・経験年数から、①〜④のどれが早いか
- 実務経験の証明書類の組み立て——10年の道を使う場合、工事の裏付けが要ります
- 登録基幹技能者が自社の許可業種と噛み合うかの確認
- 経営事項審査の技術職員名簿——6か月を超える雇用期間と、2業種までの割り振り
- 就業規則と安全衛生教育の記録の整え方——社会保険労務士としての仕事です
千葉県松戸市を中心に、東葛エリアの建設会社・工務店・解体業者の皆様のお手伝いをしております。「うちの誰に、何を取らせればいいか」からご相談ください。
参考にした資料
- 厚生労働省 職場のあんぜんサイト「安全衛生教育」
- 厚生労働省・長野労働局「安全衛生教育を効果的に実施してください」
- 東京労働局「安全衛生教育(特別教育・職長教育・雇入れ時の教育)」
- 厚生労働省「建設業における職長等及び安全衛生責任者の再教育」(平成29年2月20日付け基発0220第3号)
- 国土交通省「登録基幹技能者講習修了証の取扱いについて」(建設業法施行規則第7条の3、国土交通省告示第435号)
- 国土交通省関東地方整備局「建設工事の適正な施工を確保するための建設業法」(令和8年2月版)
- 国土交通省「よくある問合せ(技術者制度)」(令和8年2月26日時点)
- 国土交通省「技術者制度の概要」
- 千葉県「建設業許可の手引」(令和8年4月版)
- 国土交通省「能力評価基準【とび】」
最終更新日:2026年10月16日 / 本記事は令和8年10月16日時点の法令と、国土交通省・厚生労働省・千葉県が公表している資料にもとづいています。金額の基準や教育の時間数は改正で動きます。指定学科に当たるかどうか、登録基幹技能者の講習と業種の対応、専任特例の細かな要件は、申請先の手引と所管の窓口でご確認ください。
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