のしいか所長有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅、どちらをお考えですか。



サ高住のほうが手続きが軽いと聞いたので、そちらで考えています



そこが、いちばん多い思い違いです。サ高住の多くは、法律の上では有料老人ホームでもあります。どちらかを選ぶ話ではなく、重なっている。まずそこから解きほぐします。
介護シリーズの4本目です。1本目で「指定はどこに出すのか」、3本目で「申請書の中身」を書きました。この記事は居住系——高齢者に住んでいただく建物をつくる話です。
窓口の地図は1本目にありますので、ここでは繰り返しません。この記事は、その先の「どこがどう違うのか」に絞ります。


サ高住は、有料老人ホームでもあります
老人福祉法でいう有料老人ホームとは、老人を入居させて、入浴・排せつ・食事の介護、食事の提供、洗濯・掃除等の家事、健康管理のいずれかを供与する施設のことです。老人福祉施設やグループホームは除かれます。
この定義を読むと分かります。食事を出すサ高住は、この定義に当てはまります。ほとんどのサ高住が当てはまります。
では、届出も登録も両方するのか
しません。ここに特例があります。
登録を受けた場合には有料老人ホームの届出不要
高齢者住まい法の登録を受ければ、老人福祉法第29条の届出は要りません。手続きは1本で済みます。「サ高住のほうが軽い」と言われるのは、この一点です。
ただし、千葉県の指導指針は掛かります
ここからが、千葉県で建てる方に要る話です。県のページには、こう書かれています。
平成27年7月1日以降、有料老人ホームに該当するサービス付き高齢者向け住宅は、千葉県有料老人ホーム設置運営指導指針の適用対象となりました。
届出は要らないが、指針は掛かる。ただし全部ではありません。指針そのものに、登録を受けている場合は「3、4、5、6、10の規定は適用しない」という定めがあり、そこは高齢者住まい法の登録基準によることになっています。
つまり、サ高住の登録を取っても、千葉県の指針から完全に外れるわけではありません。前払金の扱い、重要事項説明書、情報開示、職員配置——このあたりは指針を読む必要があります。「登録だけ見ていればよい」と考えると、指導のときに困ります。
居室の広さが、はっきり違います
事業計画にいちばん響くのは、ここです。1戸の面積が違えば、同じ敷地に入る戸数が変わります。
| 有料老人ホーム (千葉県指導指針) | サービス付き高齢者向け住宅 (高齢者住まい法の登録基準) | |
|---|---|---|
| 一般居室(個室) | 1室21.6㎡以上 (有効面積14.85㎡以上) | 原則25㎡以上 |
| 共同生活室がある場合 | 18.0㎡以上 (有効面積13.2㎡以上) | |
| 介護居室・一時介護室 | 18.0㎡以上 (有効面積13.2㎡以上) | |
| 2人で使う場合 | 31.9㎡以上(一般居室) | — |
| 居室内の設備 | 一般居室は収納・トイレ・洗面設備を居室内に | 台所・水洗便所・収納設備・洗面設備・浴室 (共用で足りる場合もあります) |
サ高住のほうが、1戸あたり広く求められます。原則25㎡で、各戸に浴室まで。手続きは軽くても、建物は重くなる——そういう関係です。
「介護付」と名乗るには、手続きが2つ要ります
有料老人ホームには3つの型があります。
- 介護付——施設の職員が介護を提供します
- 住宅型——介護は外部の事業所から受けます
- 健康型——介護が必要になったら退去します
このうち「介護付」は、名乗れば済むものではありません。老人福祉法の届出に加えて、介護保険法の「特定施設入居者生活介護」の指定が要ります。届出だけで「介護付」と広告すれば、それ自体が問題になります。
| 名乗り | 要る手続き | 介護の出どころ |
|---|---|---|
| 介護付 | 老人福祉法の届出 +特定施設の指定 | 施設の職員 |
| 住宅型 | 老人福祉法の届出 | 外部の訪問介護等 |
| サ高住(一般型) | 高齢者住まい法の登録 | 外部の訪問介護等 |
| サ高住(介護型) | 登録+特定施設の指定 | 施設の職員 |


なお、特定施設の指定は市町村や県の介護保険事業計画で整備量が決められていることがあります。公募になる年もあります。物件を押さえる前に、計画上の枠があるかどうかを窓口で確かめてください。この点は自治体と年度で変わりますので、本記事では数字を書きません。
前払金の扱いが、いちばん厳しく見られます
居住系で、入居者保護がいちばん手厚く定められているのが前払金(入居一時金)です。千葉県の指導指針も、ここに多くの行数を割いています。
- 算定根拠を書面で明示し、保全措置を講じること(令和3年4月1日以降の新規入居者は、法律上の義務です)
- 想定居住期間を設定し、前払金の償却年数はこの期間とすること
- 全部または一部を返還する契約を結び、返還額を契約書に明示すること
- 内金は前払金の20%以内とすること
- 入居開始前に契約が解除された場合は、既に受け取った金額の全額を返還すること
- 予告期間を設けて返還義務の生じる期間を事実上短くし、入居者の利益を不当に害さないこと
さらに指針は、多額の前払金で生涯の生活を保証する契約は、原則として好ましくないとしています。
ここは、契約書と重要事項説明書を作る段階で決まってしまいます。建ててから直すのでは遅い部分です。
置かなければならない職員が、決まっています
千葉県の指針は、有料老人ホームに置く職員をこう定めています。
| 置く職員 | |
|---|---|
| すべてのホーム | 管理者・生活相談員・栄養士・調理員 業務の一部は、入居者の処遇や施設運営に支障がない場合に限り外部委託できます |
| 介護サービスを提供するホーム | 上記に加えて ・直接処遇職員(安定的な提供に支障がない体制) ・看護職員(確保が困難な場合は准看護師可) ・機能訓練指導員 ・介護サービスの責任者 |
| 夜間・緊急時 | 入居者の実態に応じて対応できる人数 |
| 研修 | 採用時と採用後に定期的に。介護に直接携わる職員には認知症介護基礎研修 |
「夜間の人数」に、はっきりした数字はありません。入居者の実態に応じて、とされています。裏を返せば説明できる根拠を自分で用意しなければならないということです。
窓口が、福祉と住宅に分かれます
同じ建物の話なのに、相談する相手が違います。
| 有料老人ホーム | サービス付き高齢者向け住宅 | |
|---|---|---|
| 千葉県 | 健康福祉部 高齢者福祉課 | 県土整備部 都市整備局 住宅課 |
| 柏市 | 市が所管 | 都市部 住宅政策課 |
| 千葉市・船橋市 | 市が所管 | 市の住宅政策課 |
| 我孫子市・東庄町 | 市町長へ届出 (県の事務処理特例条例) | 県(住宅課) |
| 審査の目安 | 事前協議から段階を踏みます | 通常1か月程度 |
サ高住は、福祉の窓口ではありません。住宅の部署です。ただし審査は「県の住宅・福祉部局が共同で」行うとされています。入口は住宅、中では両方が見ている——そう捉えておくとよいと思います。
有料老人ホームのほうは、事前協議の順番が決まっています。①地元市町村に相談 → ②市町村での事前協議申出 → ③建築確認の取得 → ④県への事前協議 → ⑤設置届。建て始めてから県に相談、では手遅れです。この手順は1本目の記事に書きました。
千葉県の補助が、令和8年度で終わる予定です
この記事でいちばん急ぐ話です。千葉県サービス付き高齢者向け住宅整備事業のページ(令和8年7月17日更新)に、こう書かれています。
補助事業は、令和8年度をもって、新規申請の募集を終了する予定です。
交付申請の受付は令和8年12月25日(金)まで。予算額に達した場合は期間内でも締め切られます。
| 通常 | 定期巡回・随時対応型訪問介護看護または小規模多機能型居宅介護を併設 | |
|---|---|---|
| 補助率 | 6分の1以内 | 3分の1以内 |
| 新築(1戸あたり上限) | 75万円 | 150万円 |
| 改良(1戸あたり上限) | 117万円 | 234万円 |
在宅系の事業所を併設すると、補助が倍になります。定期巡回・随時対応型訪問介護看護か小規模多機能型居宅介護。どちらも地域密着型で、指定するのは市町村です。補助の設計そのものが「併設してください」と言っている——読み取っておく値打ちがあります。
主な要件
- 国の補助採択を受けていること
- 緑地又は空地の面積が敷地面積の3%以上であること
- 耐火または準耐火建築物であること/スプリンクラー設備を設置すること
- 都市計画区域の用途地域内に整備すること
- 市町村長との事前協議が整っていること
- 高齢者住まい法に基づく登録が10年以上継続すること
- 介護サービス事業所・医療機関等との連携、緊急通報装置、入浴に適した浴室
- 交付決定前に着工した場合、原則として補助金は交付されません
最後の「交付決定前に着工すると出ない」が、実務でいちばん多い落とし穴です。設計と資金計画と申請の順番を、先に決めておいてください。
国は「囲い込み」を見ています
もうひとつ、知っておいていただきたい流れがあります。
令和9年度の介護報酬改定に向けた議論で、高齢者住まいへのサービス提供の在り方が正面から論点になりました。住宅型有料老人ホームの79.1%、サ高住の83.4%に、併設・隣接の介護事業所があります。
併設そのものが悪いわけではありません。入居者にとっては、同じ建物にサービスがあるほうが安心です。問題にされているのは、利用者が他の事業所を選べない形になっていないかという一点です。


まず、何から手をつけるか
- 介護を誰が出すかを決める(施設の職員か、外部か。ここで「介護付」にするかどうかが決まり、特定施設の指定が要るかが決まります)
- 1戸の面積から、入る戸数を逆算する(サ高住は原則25㎡、有料老人ホームは千葉県指針の21.6㎡)
- 地元の市町村に相談する(有料老人ホームの事前協議は、ここが出発点です)
- 特定施設の枠があるかを確かめる(計画上の整備量。物件を押さえる前に)
- 補助を使うなら、交付決定の前に着工しない(令和8年12月25日まで。令和8年度で募集終了の予定)
- 重要事項説明書を、指針の様式で作る
1項めを決めないと、あとが全部動きません。建物の話に見えて、最初の分かれ道は「介護を誰が出すか」です。
当事務所にできること
- 有料老人ホームの事前協議・設置届の一式
- サービス付き高齢者向け住宅の登録申請
- 特定施設入居者生活介護の指定申請
- 併設する訪問介護・通所介護等の指定申請
- 重要事項説明書・管理規程・入居契約書の整備
- 職員の就業規則と雇用契約(夜勤を置く場合の組み立て)
- 補助金の申請の段取りと、着工時期の確認
千葉県松戸市から、松戸・柏・流山・我孫子・鎌ケ谷を中心にうかがっています。「うちは有料老人ホームとサ高住、どちらで建てるべきか」——この一点だけでも、お気軽にお尋ねください。
参考にした資料
- 千葉県「有料老人ホーム設置運営指導指針」(令和7年3月31日改正)
- 千葉県「有料老人ホームを開設したい方へ」
- 千葉県「サービス付き高齢者向け住宅制度について」
- 千葉県「千葉県サービス付き高齢者向け住宅整備事業」(令和8年7月17日更新)
- 国土交通省「サービス付き高齢者向け住宅の登録制度の概要」
- 国土交通省「高齢者住まい法の改正について」
- 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会「高齢者住まいに対するサービス提供の在り方」
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