のしいか所長「新制度に移ったほうがいいのか」というご相談を、幼稚園の理事長先生から続けていただいています。



収入は安定すると聞くが、いろいろ縛られるとも聞く。実際のところ何が変わるのか、はっきり知りたい・・



この記事では、あえて移行して失うもののほうから整理します。よい面は各所で語られていますので、判断に必要なのはむしろこちら側だと考えるためです。
前提 ― 移行するかどうかは園が決めます
私立幼稚園が子ども・子育て支援新制度に移行して施設型給付を受けるかどうかは、各幼稚園の判断に委ねられています。移行の時期も制度施行時に限られず、いつでも可能とされています。
| 項目 | 私学助成のまま | 施設型給付へ移行 |
|---|---|---|
| 公費の入り方 | 私学助成(一般補助) | 公定価格による施設型給付費 |
| 保育料を決めるのは | 園 | 市町村 |
| 3〜5歳児クラスの無償化 | 月額2.57万円まで | 上限なし(無料) |
| 市町村の確認 | 不要 | 必要(特定教育・保育施設) |
| 指導監査 | — | 定期的かつ計画的に実施 |
① 保育料を自分で決められなくなります
これが最も大きな変化です。施設型給付に移行すると、保育料にあたる利用者負担額は市町村が定めます。国が定める上限額の範囲内で、市町村が所得に応じた階層を設定します。
同一市町村内で教育標準時間認定を受けて私立幼稚園に通う子どもの利用者負担額は、同じ所得状況であれば、同じ額となります
(こども家庭庁 幼稚園関係者向けQ&A)
つまり、同じ市内の他園と、保育料で差がつかなくなります。教育内容に自信があり、それを保育料に反映させてきた園にとっては、価格による位置づけを失うことを意味します。
上乗せ徴収は残りますが、説明が要ります
満3歳児は無償化の対象外です
無償化の対象は満3歳になった後の最初の4月から小学校入学前までの3年間です。誕生日を迎えてから年度末までの満3歳児クラスは、対象になりません。この期間の利用者負担額も市町村が定めることになります。満3歳児入園に力を入れてきた園ほど、影響を受けます。
② 市町村の「確認」を受け、運営基準に従います
施設型給付を受けるには、市町村から特定教育・保育施設としての確認を受ける必要があります。確認を受けた施設は、「特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業の運営に関する基準」(内閣府令)に従って運営することになります。
運営基準は、次のような場面ごとに定められています。
- 利用開始に伴う基準
- 教育・保育の提供に伴う基準
- 管理・運営等に関する基準
- 撤退時の基準
③ 指導監査が入ります
確認を受けた施設は、指導監査の対象になります。すべての特定教育・保育施設等を対象に、定期的かつ計画的に実施することとされています。
形は二つあります。
| 形 | 内容 |
|---|---|
| 集団指導 | 設置者等を一定の場所に集め、講習等の方法により行う |
| 実地指導 | 園に出向いて質問等を行い、必要と認める場合に内閣府令等の遵守に関して指導する |
そして、著しい運営基準違反があって子どもの安全に危害を及ぼすおそれがある場合、または施設型給付費等の請求に不正が認められる場合には、指導から監査へ切り替えられます。公費で運営費が賄われる以上、当然の仕組みではありますが、私学助成のもとでの感覚とは相当に違います。
④ 加算をとるための事務が増えます
公定価格には、職員の配置状況や事業の実施体制に応じた各種の加算が用意されています。ただし加算は自動的についてくるものではありません。申請し、計画を出し、実績を報告して初めて確定します。
区分2・3で必要になる書類
キャリアパス要件届出書/賃金改善計画書/賃金改善実績報告書
つまり、賃金規程と研修計画を整え、毎年、計画と実績を突き合わせて報告することになります。これを園長先生おひとりで抱えると、必ず苦しくなります。事務職員の体制まで含めて考えるべき論点です。
では、なぜ移行するのか
デメリットばかり並べましたので、反対側も置きます。移行を選ぶ理由は、大きく二つです。
- 3〜5歳児クラスの保育料が、上限なく無償になる。私学助成のままでは月額2.57万円が上限で、園の保育料がこれを超える分は保護者の負担として残ります
- 事業運営に最低限必要な人件費・管理費・事業費が、園児の数に応じて措置される。加算を積み上げれば、体制づくりが収入に反映されます



保育料の水準が高い園ほど、無償化の上限差は大きく効きます。保護者にとっての負担額が、そのまま園の競争条件になっているのが現状です。
判断の分かれ目
| こういう園は移行が向きます | こういう園は慎重に |
|---|---|
| 保育料が2.57万円を超えており、保護者の負担が残っている | 保育料が2.57万円以下で、無償化の差がほとんど出ない |
| 園児数が安定していて、定員を大きく動かす予定がない | 満3歳児入園や定員の増減で、機動的に動きたい |
| 事務を担える職員がいる、または増やす用意がある | 事務が園長・主任に集中している |
| 賃金規程と研修計画がすでに整っている | 賃金の決め方が慣行で、書面になっていない |
今日から着手したい5つの点検
- いまの保育料と、市町村が定める利用者負担額の階層を並べて比べる
- 上乗せ徴収で確保したい額を試算し、募集要項に書ける文章にしてみる
- 満3歳児の在籍数と、その保育料収入がいくらかを確認する
- 賃金規程と研修計画が書面になっているかを点検する
- 市町村の子ども・子育て支援事業計画で、地域の需給見込みを読む



なお、認定こども園への移行を希望される場合は、認可・認定の基準を満たす限り、原則として認可・認定が行われる特例が設けられています。あわせてご検討いただく価値があります。



移行の判断材料の整理、市町村への事前相談、賃金規程や研修計画の整備についてご相談を承っております。どうぞお気軽にお声がけください。




参考
最終更新日:2026年8月26日
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